数年前に聞いた話。

俺には叔母がいるんだが、この人がまさに才色兼備なんだ。
綺麗だし面倒見いいし、嗜み?としてダンスもできる。以下麗さんとする。
麗さんには小さい頃から、大好きな叔父さんがいたんだ。俺は会ったこと無いけど。

叔父さんは麗さんを可愛がって、本当に良くしてくれたらしい。

麗さんは小さい頃ダンスを習ってて、叔父さんは麗さんの発表会によく来てくれた。
発表後に花束をくれたりして、なかなかジェントルマンだったって。

ある時、麗さんに叔父さんが亡くなったと知らせが来たんだ。
叔父さんっていうくらいの歳だから人生まだまだだし、麗さんは本当にショックだったって。
麗さんも成長して、大学が忙しくなって、叔父さんと暫く会わない間に‥って時だった。

集まった親戚の人に、「麗ちゃんの踊りがもう一度観たかったと言ってたのよ」と言われ、号泣したらしい。

そんなことになった後、麗さんは、たまに叔父さんの夢を見るようになった。
何でも小さい頃よく遊びにいった叔父さんの家にいる夢らしい。その家で毎回必ず叔父さんに会うって。

木造の長い廊下を抜けて、二階にいく階段のところに行くと、その階段に叔父さんが、うなだれて腰掛けている。
「叔父さん」というと気がついて、叔父さんが顔をあげる。ひどくやつれた顔をしている。

それからしきりに、麗さんに向かって何かを訴えかける。内容はよく聞き取れない。
「○○って」「○○って」 ~ってしか聞き取れない。ひどいときは掴みかかる勢いらしい。

何回かみるうちに、麗さんは気づいた。叔父さんは「踊って」と言っていると。
でもダンスやってたのは子供の頃なので、今は踊るのは難しい。
なので、叔父さんに「ごめんね、もうムリなのよ、ごめんね」と言うようになった。

その日も麗さんは同じ夢を見て、同じ階段のところに行った。叔父さん、とよびかける。
叔父さんはいつもの通り同じことを言い続ける。
その時麗さんはやっと聞こえた。
叔父さんが言っているのは「踊って」じゃない。
「代わって」だ。


投稿者:イチ