私は幼少の頃から所謂幽霊というものに出会い、触れ、時には殺されかけた事もありました。今回はその中で、私が心霊スポット巡りに行かなくなった理由をお話します。

車の免許を取ったばかりの頃、よく友人達とあてもなくドライブをしていました。
昼間はそれぞれバイト等で忙しいので繰り出すのは専ら夜。自然と心霊スポットに肝試しに行こうという話しになります。ただ、地元でも有名な心霊スポットをいくつまわっても何も感じず、何も起こらず、調子に乗っていたんだと思います。あの場所に行くまでは…。

その日は23時過ぎに集まり、A男、B男、C女、D女、私の5人で出発。車の中でA男がこれから行く心霊スポットについて解説していました。向かう先は昔の罪人の処刑場です。今は海岸線に隣接した公園になっているのですが、一番奥まで進むと処刑した罪人の首を洗っていた砂浜に出れるようで、そこまで行こうとの事でした。

A男の力説を適当に聞き流しなから現場に到着。公園の入口に車を停め時計を見ると、時間は0時を少し過ぎた頃でした。いつものように散歩気分で車を降りた瞬間、全身総毛立ちました。

なんだここは…。

公園の入口から奥に続く道、10mくらい先に自動販売機があるのですが、その更に奥に、人影がありました。

いる…。立っている…。こちらを向いているのか、背を向けているのか分からない。

他の4人は気付いていないようで、さあ行くぞー!!みたいな乗りで進もうとするのを慌てて遮りました。

私「ここはヤバい。やめよう。奥に居るよ?」

A男「おっ…お前、何びびってんだよ?そんなに怖いならここで待ってろよ!」

A男は私の呼び掛けに一瞬怯みましたが、女の子の前で強がったんだと思います。実際B男は固まり無言、C女、D女は泣きそうな顔をしていました。A男に少し頭きたんで本当に車待機してやろうかと思いましたが、他の3人が可哀想だったので結局私も行くはめに。進む順番は、A男、B男、C女、D女、私です。いつもこの順番…。

公園の脇道を進んで行きました。周りは草木が生い茂ってるようです。進む先にある自動販売機の明かりの奥に目を凝らしました。

確実にいる…。このまま進んだら鉢合わせになる。何事もなければいいのだが…。

自動販売機まで進むと、立っている人影が更に奥に移動している事に気付きました。ちょうど私たちが進んだ距離と同じくらい。

特に害意は無いのかな…。

自動販売機を過ぎて少し進むと、今までアスファルトだった道が砂利道に変わっていました。周りも草木が一層生い茂り、獣道のようです。平らだったのが上りになり、しばらくすると開けた丘に出ました。下に砂浜が見え、波の音も聞こえます。一定の距離を保ちながら前を移動していた人影も消えていました。

よかった…。やっぱり害意は無かったんだな…。

一服した後、砂浜に向かって再び獣道に入りました。今度は下りです。懐中電灯も持たず、木々の間から差し込む月明かりが頼りだったので慎重に進みました。

しばらく下ると、私の視界の右端に何か違和感を感じました。そちらを見ると楕円形の黒い物体が浮遊していました。私の右側を、距離にして5mくらい、高さ2mくらいの位置を、私たちと平行して進んでいました。

なんだあれは…?

時々差し込む月明かりに照らされて、額、鼻、チラ見する眼光、その物体が長髪の生首だと分かりました。

まずい…。今4人に知らせたらパニックになる。こんな獣道、しかも月明かりのみなんて、転倒したり転落の危険がある。奴もそれが狙いかもしれない…。

至近距離じゃなくて助かりましたが、目が離せなくなりました。どうやら奴もこちらの方をチラチラ見ているようでした。

すいません、すぐに出ていきますので許してください。ごめんなさい。

心の中で謝り続けました。

横を気にしながら下っていたので何度か転びそうになりましたが、なんとか砂浜に出ました。生首は追ってきていません。A男が、ここで首を洗ったらしいよと力説していましたが私は帰りの心配をしていました。しかし4人に伝えたところでどうにかなるものでもないし、危険が増すだけなので黙っている事にしました。

しばらく砂浜で休んだ後、来た道を戻ります。帰りもA男、B男、C女、D女、私の順番。砂浜から獣道に入り、周りを警戒しました。右、居ない。左、居ない。後ろ、居ない。足元、居ない。安心して正面を見ると、前を歩いているD女がこちらを向いて進んでいます。

後ろ向きで歩いたら危ないよ?

と、言いかけて飲み込みました。D女はちゃんと前を向いて歩いていました。こちらを向いていたのは生首でした。なんとD女の後頭部にべったり張り付いて私の方を見ていました。

叫びそうになったのを必死に堪えました。

ダメだ…。今叫んだら奴の思うつぼだ。

長髪なので女だと思っていた生首は男でした。青白い顔で、全くの無表情で、じっと私の事を見ていました。

目が逸らせない。ああ、武士の霊なんだな…。すいません、もう帰りますので許してください。本当にすいません、もう二度と来ません。

心の中で必死に謝り続けました。

開けた丘に戻りました。相変わらず生首は無表情でD女の後頭部に張り付いています。

この子大丈夫だろうか…。

A男「ここもたいしたこと無かったな。」

B男「いや、ここはヤバいよ、今にも出そうだもん。」

もうばっちり出てるよ…。あとA男、やめてくれ…。

C女「処刑場なんて恨みとか凄そうだもんね。」

A男「恨みっていったって罪人でしょ。自業自得だよ。」

バカヤローーーー!!

生首がみるみる鬼の表情に変わっていきました。次の瞬間、

シャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバ…

規則正しく聞こえていた波の音に混じり、一層際立ってその音が聞こえてきました。音の方角、砂浜方向を見下ろすと、波打ち際に沿って、走ってくる人影。振り上げた腕の先に、月明かりに反射した物。武士=刀としか考えられませんでした。

私「ヤバい!走れ!逃げろ!!」

A男「なんだ!?どうした!?」

もたつくA男の頭を張り飛ばし前方に突き飛ばしました。

私「うるせー!早く行け!!死ぬぞ!!」

全員走り出したのを確認してから砂浜方向を見ると、もう砂浜から獣道に飛び込む人影。

ヤバい…。速い…。

私も最後尾から走り出し獣道に入りました。もう転倒だの転落だの言っていられない。転がってでも逃げたい。あれに捕まるくらいなら転落死の方がましだとさえ思いました。訳も分からず走らされ、後ろからは私が急げと怒鳴り続け、前の女の子二人は泣き出していましたが、D女の後頭部に張り付いている生首は鬼の形相で私を睨み続けていました。

月明かり頼りの獣道、しかも下り、もつれる者は前に掴まり、後ろが支え、なんとか誰も転倒せず下りきりました。あとは平らな道、もう少し走れば舗装された道に出る。逃げ切れる…。

そう思って一瞬後ろを振り返った時に見たものは、もう頂上から獣道に飛び込んでくる人影。

有り得ない…。早過ぎる…。およそ人間の最高峰といえるくらいの速度と距離で時間計算していたのに…。甘かった。人間ではなかった…。

とは言え逃げない訳にはいかない。間も無くすぐ後ろに気配を感じ、よせばいいのに走りながら振り返ってみました。ボロボロの着物のような物を羽織り、振り上げていた物は短刀のような、刀より短い物でした。首がありませんでした。生首の本体なんだと思います。

走りながら自分の背に迫ってくる気配に、逃げ切れないと感じ、私を護ってくれているものに必死に祈りました。

舗装された道に出た瞬間、急に足がもつれ、前方に転がりそうになりましたが、何とか立て直し、既に息を切らしながら車の前で倒れ込んでる4人の元に着きました。

後ろを確認すると、自動販売機の奥にあいつが居ました。

お前だったのか…。

D女の後頭部に張り付いていた生首も消えていました。

A男「おまっ…なんなんだよ…?説明しろよ…っていうか、お前なんて格好だよ(笑)」

私はズボンが下がり、パンツ丸出しでした。

もうズボン上げる気力も無いよ…。

泣いていた女の子二人も、私のまぬけな格好を見て笑みが戻ってきました。

私「とりあえずここ離れよう…。車で話すよ。」

そう言いながらズボンを上げ、ベルトを一旦外し締め直そうとすると、するっと抜けてしまいました。見ると革のベルトが後ろでスッパリ切れていました。

霊を冒涜していたのはA男なのに…。私は最初行くのを遮ったし、霊に謝り続けていたのに…。結局、怖い思いしたり危害加えられるのは霊感ある人間なのか…。割りに合わな過ぎる…。

車の中でD女の様子を見ていましたが大丈夫そうだったので、生首の事は伏せ、首無しが追っかけてきていた事だけ話しました。私はそれ以来、心霊スポット巡りに行かなくなりました。


投稿者:たか