これは私の家内が体験した実話です。
今から10年ほど前、当時まだ独身だった彼女は板橋区の
とあるアパートで独り暮らしをしていました。
古いアパートの1階。 6畳一間。ドアを開けると すぐに私道があり、
それを挟んで向かい側には一軒家が並んでいます。

会社に出かける朝、帰ってくる夜、どこかへ出かける休日。
いつも玄関を開け閉めする際に、なんだか誰かに見られていると感じたそうです。
そのアパートに住み始めて数か月経ったころに気付いたとのこと。

ある日、出先から帰ってきてドアのカギを開けようとした時に、
背中に視線を感じて振り返ってみると、向かいのおうちのおばあさんが窓の隙間から
じいーっとこちらを見ているのがわかりました。
あからさまに嫌な顔をするのもどうかと思ったので、
軽く会釈しました。しかし、バツが悪いと思ったのでしょうか?
おばあさんは何も言わずスッと引っ込んでしまいました。

別の日にドアを開け閉めする際に、また背中に視線・・・
というより人の気配がしたので、振り返ると、そこには小さな男の子が立っていたそうです。

「坊や、どうしたの?いつのまに?」と問いかけましたが、何も言わずにどこかへ走り去ってしまいました。
その子は、まばたきをまったくしなかったそうです。

それから1週間後、何気なく玄関のドアスコープ(のぞき穴)から外を見ると、
この前の小さな男の子がドアの前にいました。やがて男の子はこちらに近づき、
ドアにピタッとへばりついた気配がしました。
耳をつけたり、新聞受けのところから覗き見て部屋の中をうかがい知ろうとしているのがわかります。

彼女は、一連のことを思うと薄気味悪くなり、声を潜めてやり過ごそうとしました。
しかし、ドアに張り付いている子供がいきなりドアノブをガチャガチャと回しました。

その大きな音に驚いた彼女は、思わず「ヒャッ!」と声を上げてしまいました。
この小さな悲鳴が偵察役の子どもに聞こえてしまったとみえて、
彼はいつぞやのおばあさんに向かって言いました。

「ばあちゃーん、おねえさん中にいるみたいだ!居ないふりをしているぞ!」

彼女は泣きそうになりながら、恐る恐るのぞき穴から向かいの家を見ました。

やはり、向こうの家の窓の隙間に おばあさんが見えました。

すると、おばあさんが こう言ったそうです。

「おやおや、ま だ 生 き て い る の か い ?

今度の住人は、ずいぶん しぶとい女だねぇ・・・」

妻はその日のうちに引越を決意したそうです。


投稿者:けんぞう