長文失礼します。

15年ほど前に体験した話。
小学校を卒業し、春休みに入ってすぐ「腸感冒(ちょうかんぼう)」に罹った。
(ちなみにこの「腸感冒」という病名は地元特有の呼び方で、全国的には普通に胃腸炎と呼ぶらしい、というのをケ○ミンショーで知り驚愕したww)
テンションガタ落ちだったのだが、所詮は風邪に毛が生えた程度の病。2~3日もすれば治るだろうと高を括っていた。

が、どういう訳か1週間ほど経過しても治る気配がない。

さすがにおかしいと病院にも行ったのだが、別に重篤な病気を併発している訳でもなく、原因が分からない。
とにかくこまめに水分補給し、安静にしていろとのことであった。
前述のとおり大した病ではないのだが、何日も続けば精神的にも参ってくる。

そんな状態が続いたある日、祖母が近所の神社にお参りをして来いと言うのである。
この祖母というのがかなり信心深い人で、暇な時は誰に頼まれた訳でもないのに神社の掃除などをするような人なのだが、何でも私が寝込んだ日から毎日神社にお参りに行ってくれていたらしい。
それでも治らないため、これはもう私自身が直接足を運ばないと意味が無いと言うのだ。
正直信仰やまじないの類に興味が無かった私は祖母の厚意に感謝しつつもその提案を断ったのだが、
祖母は絶対に行け、と全く引き下がらない。

結局私は折れ、お参りに行くことになった。
神社は家から徒歩10分程度の所にある、県外どころか隣町まで行けばもう誰も知らないようなマイナー神社である。
さて神社に着き、いざお参りをしたのだが、よくテレビで観るようなお祓いだのお焚き上げだのといった「いかにも」なことは一切せず、お賽銭を入れ手を合わせて終了。これだけである。
普段ならば何のことはないが、病体の私にはかなりの重労働。
家に帰る頃にはヘトヘトに疲れ、すぐさま布団で横になった。

と、その晩こんな「夢」を見た。

夢の中、私は真っ白な空間を歩いていた。
体は勝手に歩き続け、自由に動くのは首から上だけ。あたりを見渡すと、なぜか歩く自分の左右にガードレール?が敷いてあり、それが真っ直ぐ前方はるか先まで延び続け、最後は2本の線が重なるほど遠くまで続いているのである。
と、ここで私はこれが夢の中だと気付いた。気付いたといっても体の自由は利かず歩き続ける体に任せることしかできなかった。
ずいぶん長く歩き続け、やがてガードレールの終わりが近づくと、あるものが見えてきた。
それは「ドア」だった。どこにでもあるようなドアが、空間にいきなり立っていたのだ。
流石に少々恐怖心が生まれ、「目覚めろ!」と念じてみたが結局それは叶わず、そのドアの前で足が止まった。
ドアは私を待っていたかのように、ゆっくりと開き始めた。

と、次の瞬間私は息を飲んだ。
中から出てきたのは若い女性だった。その容姿というのが、真っ白な着物を羽織り、顔立ちは所謂日系なのだが非常に端正で、肌は透き通るように白い。
髪も艶やかな黒髪で、それをうなじで一つに束ね、腰元まで下ろしているのである。
身も蓋もない言い方をすれば、「超絶美人」であった。
というより、「美人」という表現が失礼に感じるほどの神々しさを感じられる姿だった。
この時なぜか私はとっさに「声を出してはいけない」と思い、押し黙った。
今思えばなぜこのような行動をとったのか分からないが、当時の私が子供なりに考えて出した結論だった。
不思議と怖いという気持ちは消え失せ、ただ必死に音を立てないことに全神経を集中していた。
女性の方も、ただ凛とした表情でこちらを見据えていた。

そんな状況がしばらく続いていたが、あっさり沈黙は破られた。
急にくしゃみがしたくなったのである。もちろん、焦った。
「声出したらいけんのに‼ てか夢の中なのになんでくしゃみ出そうなんだ!?」
と、内心パニックに陥ったが、一度出そうになったものはもう止められない。
一発デカいのをかましてしまった。

と、ここで目が覚めた。
その後、それまで停滞していた病状は回復し、結局休みはほとんど潰れてしまったが、なんとか無事に中学入学に間に合わせることができた。
社会人になった今では地元に帰る機会もずいぶん少なくなってしまったが、休暇で帰省した際は必ずお礼参りするのが私の決まりになっている。

追記
後にオカルトやその類の話に詳しい友人から聞いた話である。
この神社には「あしなづち」 「てなづち」という2人の神様を祀っている。
老夫婦の神様であり、私の前に現れたのは若い女性の姿だったことから、この2人の娘の「くしなだひめ」(←地域によって「いなだひめ」や「くしいなだひめ」などの呼び方もある)ではないか、とのことだ。
また「夢の中でくしゃみが出た」と表現したが、これは元々くしゃみが体内に入った異物を外に出そうとする生理現象であり、私の中にあった「その類の何か」が外に出ようとしたのを、体がくしゃみに近い感覚に感じたためではないか、とのことである。
友人曰く、テレビなどの心霊特集で出演者が「気分が悪い」と吐き気を催すようなシーンがよくあるが、これの1割くらいはガチらしい。

また、当時信仰心の欠片も無かった私の前に神様がそれほど力のある姿で現れたのは、日頃から神社をきれいにし、毎日お参りをしてくれた祖母のおかげだという。
なんというか、ばあちゃん、ありがとう



投稿者:シン