昔住んでたアパートはワンルームで、
ドアを開けるとすぐ部屋って作りだった。だから備え付けのベッドからドアが見えるんだ。部屋の明かりを消すと、廊下の明かりがドアの下と、覗き穴から漏れる。
ある日、眠れなくてそんなドアから漏れるぼんやりした明かりを横になりながら眺めてたんだけど、廊下でカンカンカンっていうような音がした。
ヒールの女かな?って思った。んで、うちのドアの前を横切ったのが分かった。影が横切ったから。
でも、ドアが閉まる音がしなかったんだよ。
気にしないで寝ようと思ったんだけど、どーも一回気になり始めるとどんどん不気味な想像が広がって怖くなってくるわけ。ちょうど一人で怖い話を観てるときみたいにさ。
んで、その頃、おれは基本部屋の鍵って閉めてなかったんだよ。ボロアパートに男の一人暮らしで、盗まれるようなものも無かったから。
その日も開けっ放しで、おれの想像はドア一つ隔てた向こうに頭のおかしなハイヒールの女がいるかもしれないってとこまできてて、どーしても気になってしょうがなかった。
それで、思い切って鍵を掛けることにした。本当にびびりだな、なんて自分を自嘲しながら、ガチャン、て鍵掛けたんだよ。
その瞬間カンカンってさっきの甲高い音がしてさ、ちょっと腰抜かしそうになった。やっぱり、すぐそこに居たんだよな。ちょっと本気で怖くなってガキみたいにすぐ布団潜ったんだけどさ。
いるんだよなあ、部屋の前に。
しかも、さっきしてた音、多分ヒールじゃなかった。影が微動だにせずドアに張り付いてるのに、音は断続的に続いてたもん。
ほんと勘弁してくれーって半泣きで、それでもドアから目を離せないで居た。その内、すっげえ気分が悪くなってきちゃって、悪酔いして目回してるかんじ。カンカンカンって音と光景ががぐるんぐるんまわって、その場で吐いてしまった。ほんとなんだよ。吐いてしまって、やべって思ったところで、どうやらそのまんま、酔いつぶれるみたいに寝てしまったらしい。
翌朝、酷い臭いで眼を覚ましたんだけどさ、なんかすげーホッとしたのを覚えてる。
以上、あんまり怖くないけど、俺の人生で一番怖かった話でした。
これがあってから、鍵はしっかり掛けて暮らしてます笑


投稿者:たまる