もう何年も前の話。
当時、初めての原チャリを購入して浮かれていた俺は、いろいろな場所を颯爽と走り回っていた。

そんな頃のお話し。

いつものようにツーリングに出かけた俺は、ふと毎年家族で初詣にいく無人の神社のことを思い出し、そこまで原チャを走らせた。
小さな社?が長い階段のさきにあるだけのところで、初詣でもないのになぜそんな場所まで足を運んだのか、当時の俺の奇行には触れないでほしい。

とにかく、階段を登りきった向こう、賽銭箱の前に光輝くなにかがあった。
よく見るとそれはゆらゆらと上下左右に揺れていて、まるで生き物のようだった。
俺の目はそれに釘付けになった。
しばらく観察していると光が弱まり、代わりに何かの形をなしていく。

メチャクチャ驚いた。
俺の目の前にばかでかい蛇が唐突に現れたからだ。
そいつは長い鎌首を優雅にもたげ、固まっている俺に顔面を近付けてくる。
血のように赤い瞳が印象的で、驚きはしたが怖くは無かったと記憶している。
その瞳の奥に理性的な輝きを見たためだろうか。

その時俺は、あ、この蛇は神様だ、と直感した。
そして、心のなかで毎年家族で正月に参拝してます、お邪魔してます、と言った。
蛇の神様はしばらく俺の体を舌で舐めたり匂いを嗅いだりしていたが、それも飽きたのか唐突に目の前から消えていなくなってしまった。
それだけのなんでもない話。

なぜ今になってこんな話をしたのかと言うと、先日恋人と2人で京都の神社に行った時、多分神主だと思うが、その人が俺の目の前までやってきて、『なんという御方をつれているのか。体は平気か』などと意味不明な問答に晒されたからだ。
切迫した神主の様子に気圧されながらも、なんとか『平気ですが』と答えると、神主はまるで珍獣を見るような目で俺を見る。
これにはさすがに気を悪くしたが、彼女の前で悪態をつきたくなかったので我慢した。

そのあと、明らかに不機嫌顔になった俺の様子に気付いたのか、神主はその場を去ったが、結局もやもやしたものは晴れず、俺の記憶に残った。

そしてその日の彼女との別れ際、彼女はこんなことを言った。

そう言えば俺と付き合うようになってから、度々大きな蛇が夢の中に出てくるようになった。白くて赤い目をした、見たこともないほど大きな蛇。
もしかして、その蛇が俺についてるんじゃない?と。

俺、あれから1度も蛇神様に会ってないんだけどなー。

投稿者:あ