先週末、京都北部の地元に帰省したときのお話しです。

 私の家族は毎年正月になると、地元の神社へ初詣に行きます。
  長い階段を登った先には猫の額ほどの広さの小さな神社があり、そこで私たち以外の参拝者に出会った記憶はありません。

 私は少し思うところがあり、休日を利用してそちらに赴きました。

 ようやく到着したのは夕方ごろです。
 神社に辿り着いて長い階段の先を見上げましたが、そこには見慣れた光景が広がっているだけで、なにかを感じるようなことはありませんでした。

 ところどころが欠けた古い石作りの階段を登りきった向こう、賽銭箱の前に子供がこちらに背を向けて立っていました。
 なんと表現するのが適切か分かりません。
 とにかく、私よりはるかに小さいはずの、しかしその背の存在感の大きさに、私は固唾を呑んで立ち止まりました。

 子供はゆっくりこちらへと振り返ります。

 とても美しい男の子だった…………と思います。

 いつまにか、私の隣に誰かが立っていました。
 目の前の男の子とは別の誰かです。
 本当に不思議なのですが、そのときの私は隣を確認して、顔を確認しようとは思いませんでした。

 男の子はしばらく、私と、私の隣に立っている誰かを見つめていました。
 私もその男の子の様子をじっと見返していました。

 やがて男の子は1つ頷きを入れたあと、こちらに向かって歩いて来たかと思いきや、無言で隣を通り過ぎ、そのままどこかへと去って行きました。
 振り向いて男の子の姿を探しましたが、もうどこにもいませんでした。
 ほんの僅かな時間で完全に見失ってしまったのです。まるで煙のようにいなくなっていました。
 隣に立っていたはずの誰かも、そちらも同様、いつ間にかいませんでした。

 初めからそこには誰もいなかったかのように。

 その後、丁寧にお参りしてから帰宅しましたが、どういうわけかその日会ったばかりの男の子の姿形がまるで思い出せない。
 確かに男の子だったと記憶していますが、それ以上の情報がなにも出てこないのです。今でも思い起こせません。
 あのとき、側に立っていた誰かも、それ以降姿を見ません。

 唯一確信をもって言えることが、どちらも人ではなかった、と言うことです。


投稿者:あ