この俺が、人生で唯一と言っていいほど体験した怖い話。

2、3年前ぐらいだったかなあ。そこらの底辺校卒業した俺は、大学に進学することもなく、就職することもなく、朝から晩まで駅前の居酒屋でバイトに明け暮れてた。まあそれなりにシフトも入れて貰ってて、長くいることが多いから店員皆仲良くなるわけ。それなりに稼いで、まあまあ世間的には許される程度の生活をしてた。実家暮らしだったけど。

そこで仲良くなった女の子、明美(仮名)って子がいたんだよ。その子は俺とみっつ違い?(あんま覚えてない)まあなんせ、絶賛女子校生してる年齢だった。本人曰く冷え性らしくて、半袖の制服に黒い長袖のインナーをずっと着てた、真性の女の子らしい子。若いなあ、いいなあ、なんてたわいも無い会話してたんだ。ほぼ毎日シフト時間も被ってて、ほら、心理学者とかが一緒にいる時間が長いと物理的に仲良くなるって言うじゃん?その法則で俺と明美はバイト仲間に冷やかされるほど仲良くなってた。満更でもなかったけど、当時俺には高3の夏から付き合ってた子がいたんだよな。明美とは仲良かったけど、あくまで可愛い妹って感じだった。

んでま、バイト半年目くらい。明美から告白されたわけ。自分で言うのもなんだけど、あ~、そろそろ来るだろうなって。まあ、当然の如くやんわり断るよね。彼女がいるとは言わなかったけど、ごめん、俺は明美をそういう目では見れないって。少し可哀想にも思ったけど、そっか、ってうなずいてくれた。でも、バイト内で告白されたとか勘付かれるの嫌だから前みたいに仲良く話してくれますか、って。そりゃもちろんだよって答えた。ここらへんの会話はあんま覚えてないけど、ありがとうって言われてなんか瓶の香水?みたいなのをプレゼントされたんだよな。ボトルの形がハートで、赤い色。ああ、俺がオッケー出したらプレゼント渡して明美が違う意味でありがとうって言うのを夢みてたんだとしたらスッゲー罪悪感で。俺香水とか使わない人だったけど、せめてもの罪滅ぼしにってバイトある日は毎日それかけて行こうと決めたんだ。

んで、次のバイト出勤日。いつものように明美がいたから、おはよう、って喋りかけた。少し心配そうな顔をしてたけど、俺があまりにも何もなかったように話すから明美もいつもみたいに笑顔になってた。そしたら匂いに気付いたらしく、「あっ、それ着けてくれてるんですね」って。うん、いい香りだなコレ、って言ったらそうでしょう?明美が選んだんだから当然って。ああ、いつも通りだ、よかった、って思った。

んでそのちょうど一ヶ月くらいあとかな?大学進学を選んだ彼女と、久しぶりに会おうかって話になって。ほぼ毎日LINEはしてたんだけど実際会うのは久々で超舞い上がった。でもお互い時間があんまり合わなくて、結局俺がシフト5時までの日に、晩御飯一緒に行こうかって話になって。流石に彼女と会うときに他の女の子から貰った香水はつけていけないので、その日は香水をつけていかなかった。

そしたら明美が、「あれ?今日は香水つけてないんですね?」って。さすが女だと思った。そしたら俺浮かれ半分だったからさ、思わず口滑らせて

「そうそう、今日彼女と会うからさ」

って言っちゃったんだ。言った瞬間あっ、て思ったけど半分まあいいかって思ってた。だって一ヶ月も経ってる間、本当に俺と明美は何も無かったかのような感じだったし。勝手に明美は俺のことすっぱり諦めてるもんだと思ってたわけ。顔色一つ変えずに明美は「へええ!彼女さんどんな人なんですか?!」って聞いてきて。ちょっと不機嫌になられたらどうしようか内心焦ったけど全然気にも留めてない様子だったからホッとした。んで取り繕うように彼女の写真見せたらえええ、美人ですね!って。Twitterとかしてないんですか?って聞かれたからついついTwitterならいっかと思って見せちゃったんだ。そっちの方が写真いっぱい載ってるしね。

んで、俺は5時上がりで明美は9時。明美は高校生だからラストまで入れない。お疲れ様でーす、お先に失礼しますつって速攻で着替えて店を出た。店の裏口出たところで彼女が待ってくれてて、その何気ない優しさにああ、俺ほんとこいつ選んで良かったとか思ってたんだ。んで飯食って久々に彼女んち行って。朝彼女が大学3限からだったから、夕方出勤の俺は彼女見送って着替えてまたバイト。

んでその日驚いたのが、明美がバイト、インしてなかったんだよな。店長に聞いたら体調不良?かなんかで。あの元気な明美がめっずらしいなーって思ってたら、その日を境に長期に渡ってバイト休むようになった。明美は店長のお気に入りだったから、電話越しでもあんまりキツく言わなかったんだと思う。サボり癖があるような子でもなかったし、無断で欠勤なんてする性格でもなかった。学生だしテスト週間に本腰入れ始めたのかな?とか色々思ってたんだ。

明美が休むようになって三日後?くらい、彼女から愚痴を漏らされるようになった。ポストに虫の死骸?とか、夜中にインターホンをガンガン鳴らしまくられるとか。なんてベタな嫌がらせだよって思ったけど本気で気に病んでるようだったから大丈夫か?とかマメに言葉は掛けてやってた。電話してみると、Twitterでも被害に合ってて、最近アカウントを消したって。確かに数少ないフォロワーから一人いなくなったとは思ってた。でも逆に考えたらそのTwitterの嫌がらせやってきた奴がリアルにでも嫌がらせしてんじゃねえか、と思って。彼女もよく自分家とか映してアップする子だったし。Twitterのアカウントって消しても30日以内なら復活出来んじゃん。IDとパスワードを彼女から聞いて、俺のTwitterでログインしてみた。そしたらその嫌がらせリプを送っている犯人は、明美だったんだ。薄々まさかとは思ってたけど、どっかで信じたくない俺がいたからなるべく考えないようにしてたんだが。十字架のマークに、あけみ、って変な筆記体で書かれてた。流石の俺も彼女にこんなことされて怒りを隠し切れなくなって、こいつ何してんだって思った。んで、ふいにTwitterの写真のとこ見てみたわけ。一瞬で背中がゾッとした。悪寒が走るってほんとこう言うことを言うんだな。自分のリストカットして流した血を瓶に垂れ流してたんだよ。そう、俺が貰った香水の瓶、ハート型のな。心の底からきっっっめえ!!!と思って瓶を窓の外に放り投げてやろうとしたんだが、何故か瓶が見つからなかった。毎日俺は明美の血混じりの香水を身体中にぶっ掛けていたんだと思うと嘔吐しそうになった。もうそれ以上写真は見れなくて、とりあえず寝よう、と。明日明美にLINEして全部聞いてやろうと決心した。

その晩。案外眠れた俺は、ベッドの揺れで飛び起きた。地震か?!と思って。俺の隣県が大きな地震にあったばかりなのでついにきたかとか思ってさ。そしたら、違う。揺れてんのは俺のベッドだけなんだ。ガガガ、ガガガ、って感じの横揺れ。なんだこれ、なんだこれ?!ってめっちゃパニくった。そしたら床にコロコロ、って感じでなんか転がってきてさ。混乱して動けなくって、頭だけ横に向けて見たらそれ、香水だったんだ。そう、明美が送ってきた真紅の。

なんで今これがここに、とか混乱が頂点に達したとき、耳元でハッキリ聞こえたんだよ。明美の声で 、「うそつき」って。

瞬間ぱたりと揺れがやんで飛び起きた。床見たんだけど香水だってない。んで急いでタンス引っ張り開けたら、異様に真っ赤になった香水があった。もう俺死ぬかと思ったよ。怖くて怖くて電気付けて、深夜だったけどオカン無理矢理起こして香水捨てに行ってもらった。ほんとこういうの経験したこと無い人だったから耐性無いんだよ。今思えば俺のビビりよう半端無かったと思う。

それからどうなったかと言うと、彼女への嫌がらせは全然無くなって、明美との連絡も一切取ってない。LINEもブロック削除したし、Twitterも見るとこのアカウントは削除されてますって出た。バイト先も変えようかと思ったが、ずっといて時給も上がってんのに勿体ないとかいう貧乏思考から辞める決心がつかなかったんだよな。勤務時間と減給覚悟で、店長に明美とトラブルあったんで時間帯変えて下さい、つったら「あぁ…明美ちゃんね、もうバイト辞めるって。つい最近、昨日くらいかな?電話あってさ。残念だね…」って言われて俺拍子抜けした。なんだよ、それ、って思ったけど正直クッソ安心したよ。

今考えたらアイツ、ずっと黒の長袖インナー着てたの、リスカ跡を隠すためだったんだろうなって。シフトもきっと、俺に合わせてたんだと思う。気付くの遅すぎだけど。

今でもどっかで明美は鮮血入りの真っ赤な香水惚れた男にプレゼントしてんのかな。女から赤い香水貰ったら、ほんとお前ら注意しろよ。



投稿者:nogu