子供の頃、両親と兄妹3人の家族5人で温泉旅行に行ったときの話。

古いがかなり大きい旅館に泊まった時の事。
温泉に浸かるのが長い両親2人を置いて、私たち兄妹はさっさと部屋に戻りゲームをしていた。
しばらくしてゲームにも飽きてくると、誰ともなく部屋を物色し始めた。

物色といっても、部屋の造りや窓からの景色を楽しむ訳ではなく、ずばり「お札探し」を始めた訳だ。
こういう古い旅館やいわくつきのホテルなんかには部屋に飾ってある掛け軸や額縁の裏にお札が貼ってある、という類の話を誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。
しかし、それまで旅行先で幾度となく探してみたものの、実際にお札を見つけたことなど一度もなかった。
そのため、適当なタイミングで「お化けがでたぞ‼」と騒いで終了、というのが私たち兄妹の旅行先での恒例イベント(今思えば迷惑な話だが;)だったのだ。

しばらくすると下の妹(ここではB子とする)がいきなり叫びながら走ってきた。
それを見た私と上の妹(A子とする)はktkrとばかりに「出たー‼」と騒ぎ始めた。

が、次の瞬間私とA子は固まってしまった。

B子が泣いている。それも悪ふざけの類ではなくガチで泣いている。
いきなり大声を出して驚かせてしまったのかと慌てて2人で訳を聞くと、
部屋の角(床の間?)に飾ってある掛け軸を指さし

「あった」

兄妹全員で凍り付いていた。まさか本当に遭遇してしまうとは。
この時掛け軸を確かめた訳ではなかったのだが、なによりB子の異様な怖がり方にあまりに説得力があり、完全に動けなくなってしまった。

数十分後、両親が部屋に帰ってくると、やけに静かな私たちに驚き「どうしたん?」と尋ねてきた。
私が事の顛末を説明すると、父が掛け軸の所へ行き、それをめくった。

「ないぞ」

掛け軸の裏には何もなかった。
しかしB子は「そんなはずはない」と掛け軸を指差し続けていた。
あまりの必死さに両親も、ひょっとすると本気なのかも?と言う風な顔をしていたのだが、そんな理由で部屋を変えてもらう訳にもいかず、結局その部屋で就寝した。

まあ実際の所、この後家族が事故に遭っただの病気になっただのといった「いかにも」なことは一切起こらず、翌日以降はその出来事も忘れ、がっつり旅行を満喫して帰宅した。


数日後、ふとこれを思い出し、B子に聞いてみた。

私 「掛け軸の裏にお札あったん?」

B子 「ううん。お札やない」

私 「何があったん?」

B子 「壁に穴があった」

私 「何それ? 中見たん?」




B子 「人がたくさんおった」



投稿者:ああああ