これは私が中学三年生の時に体験した話です。
先に断っておきますが、怖くはありません。全く。



私達の学校の校舎は上空から見ると、アルファベットのHのような形をしており、東西に伸びる北校舎と同じく東西に伸びる南校舎を繋ぐ通路のような部分、ここの一階に昇降口がありました。

北校舎には後々付け足された部分もあって歪なつくりでした。
主にクラスとして使用されていたのは南校舎で、北校舎は音楽室や美術室、技術室や被服室といった特別教科用の教室ばかりがあり、用のない限り生徒達が近付くことはなかったためにとても暗く涼しく、ひっそりとした静かな所でした。

その北校舎につながるもう一つの通路、これは一階部分だけのものでしたが、この通路が私達のクラスの真向かい、ほぼ目の前にありました。
そして、教室と通路の間にある廊下は体育館へと繋がっていました。
私達のクラスは校舎の一番端にあったのです。


当時の私達のクラスの国語担当教員は毎朝、早くに登校しているようでした。
その彼の授業では、彼の作成したプリントが使用されるのですが、これは授業で配布されるのではなく、教室の前の廊下にある手摺りに、紐で括り付けられたクリップに挟められているのです。


当時、私は近所に住む友人Aと登校していました。私達は他の誰よりも早く登校していたため、教室に一番のりすることがしばしばで、ごく偶に、数ヶ月に一回程度で先着がいる、といった具合でした。



さて、初夏のある日。
私達が変わらず登校をすると、新しいプリントがクリップに挟められていました。Aは鞄も置かずそのまま、教室の後方ドアを素通りし、教室の外壁手摺りのやや中ほどにあるプリントに向かいました。
私も少し遅れて向かいます。教室の後方ドアの前を素通りします。

その時、私の視界の端に教室の中がチラリと見えました。
教卓の前の席に黒髪ツインテールの女の子がちょこんと座っていたのです。そこはNさんの席でしたので、私はプリントをクリップから外すAに駆け寄りながら言いました。
「今日、Nさん早いね。もう来てるよ」


しかし、プリントを外し終えて二人、教室に入るとそこには誰もいないのです。Nさんの座っていた席には鞄もないし、机の中には何もない、椅子だって机の下にちゃんと収まっている。
Aはちょっと困った顔をしていました。
「Nさん、来てないじゃん」
「え、でもさっき、ここにこう…(再現してみせる)、座っていたんだよ? んで、頭を下げて、髪をこうして…」
と言ったところで思い出したのです。
Nさんの髪は短いということを。


Aには、見間違いじゃないの?と笑われました。
その日の夜、母にも同じ話をしましたが、妄想じゃないの?と笑われました。


私のクラスは先述した通り、南校舎の端にあり、北校舎と繋がる通路が目の前にある、
また、体育館がすぐ横にあるために全体的に影った場所でした。

また、長い話になるので書きませんでしたが、北校舎には昔、自殺があったとか悪い噂もあり、
人も寄りつかず、陰気な場所でした。
実際校内には不可解な場所や目撃情報もありましたし。
加えてすぐ近くにある別の中学校は大昔の首狩り場だったと有名で、それに関係する話も豊富でした。それとは別の近所には曰く付きの場所が何件かありましたし…



そのことを考えても、
やはり…あれは…と、自分の見たものを信じ、今でも考えてしまうのです。
そして、私はどうして外見的に違う彼女をNさんだと自然と勘違いしたのかも、今でもとても不思議なんです。



投稿者:味田