僕は秋祭りの山車で有名な町に住んでる。
地方っちゃ地方だけどイオンもあるし、結構便利なとこなんだ。
ただ、やっかいなのが、青年団だ。だいたい幹部は壮年なんだが、なぜか青年と主張してる。
僕の住んでいるところの青年団は特殊だ。伝統もあるだろうが、
もっと複雑なものがあある。

ほぼ八○○さんなんだ。でも、地元の男は一度は属さないと
旧家の名折れになっちまう。期間限定で入って、抜けて普通に就職するのがかたぎの
地元民の習慣なんだ。娘の場合はそんなのないけどね。
だから、一年だけという約束で入ったんだ。大学3年のとき。
4年になったら就活があるだろ?だから早めにって。
まず、若頭に新入りは指示を受けるんだが、もろに刺青すごい。
僕らの町の場合、元々江戸時代の後期に時代に乗り遅れて
職にあぶれたやつらの救済措置として、町で青年団を作ったんだ。
町によって由来は違うだろうが、僕がばあさんから聞いた話しはこうだった。
要するに浪人の成れの果て。だから…飼い殺しなんだ。
時折エネルギーを注ぐ対象が必要になると、町では変な事件が起こる。
村八分とかさ。一軒を徹底的に町中でいじめるんだ。皆見て見ぬふりさ。
僕の町には人権なんかあったっけと頭を抱えたよ。
お向かいのさっちゃんは、僕が小学生のときに越してきた。
僕がちょうど青年団に所属した一年は、そこの家が、ターゲットだった。
半年もたずに、転居していったよ。なぜならそこの家には、お父さんがいなかったから。
男手がないから、後ろ盾がないから、怖いものなしにいじめられたのさ。
僕はどうしようもなかった。町の掟にしたがって、青年団がいじめて
町内会が内内で財産を取り上げて分配する。稼ぐ能力がない、過疎で潰れかかった町が
生き残るには、誰かをつぶすしかないんだよ。その相談のために週に一回の、青年団の寄り合いがあるんだ。訴えられないように、各種方面に裏で手を回してね。
僕の町にはみんな来ないほうがいいよ。文明はここまでたどりついてないからね。
昨年の祭りのとき、うらめしそうなさっちゃんの赤い目を見たよ。池の表面にぼうっと立っているようだった。生きていればあんなことはできないよな?そうだろ?
けどさ、なんで池の上なのさ?怖くて考えたくないよ。
大きな池の淵にお寺があって、春には桜が、秋には紅葉が見事さ。
お囃子が鳴り響くなか、山車が練り歩く。僕にはあれ以来、葬列にしか見えないんだ。


投稿者:くるめ