真夏の夜空に咲く大輪の花。「花火」

人はどうしてこれほどまでに花火が好きで、花火を観たがるのでしょうか? 日本人は特に。

元々、花火は死んだ人間たち、つまりあの世に行ってしまった人たち、天に昇ってしまった人たちの心を慰めるためのものだと聞いたことがあります


私も花火が大好きでした。

あの夜までは

 8歳の時でした。
北国で過ごした夏、8月のお盆の花火大会。今でも忘れることができずにいます。
珍しく夜になっても蒸し暑い日でした。

若かった父と、3歳の弟を背負った母、嬉しくてはしゃぎまわるおさげ髪の私。

町は賑やかでした。どこにこんなに人がいたのかと思うほど人で溢れていました。老いも若きも人々の顔は輝いていたように記臆してます。

道沿にはびっしり並んだ出店屋台。人にぶつかり、かき分けながら花火が見える場所に向かいました。
私達家族が辿り着いた時には、小高い丘の見晴らしのいい場所はもう既に大勢の人だらけで、座るところもありませんでした。

幼い私達を連れた父母は困ったようでした。

その時父は「まかせておけ」と言わんばかりに、私をヒョイとおんぶしてズンズンと丘より更に高い山の方に向かって行きました。

細い道はあったみたいでしたが、真っ暗でクマザザが生い茂り、私の素足に当たり痛かった記臆があります。
どのくらい登ったでしょうか。
先程までいた丘の人だかりが、はるか彼方に見えました。


ここなら花火がはっきり見える。誰にも邪魔されずに。しかも私達家族の貸切状態。
苦労した甲斐があっただろう。と父は満足した様子でした。熊笹をなぎ倒し、家族4人が座れるスペースをつくりました。

花火が打ち上げられました。父、弟、母、私の並び方で花火を見ました。何発か終わった頃、私は何か違和感をおぼえました。家族しかいないはずなのに後ろの方でガヤガヤと音がするのです。振り向いても誰もいません。
気のせいと思って花火に集中しましたが、今度は私の左後ろの方に気配がするのです。思わず見てしまいました。
すると黒っぽい顔の男の人が白い歯を出して笑って私を見ているのです。私は声を上げました。「お父さんおっかないよぉ」父も母も花火に夢中でした。私は我慢しました。すると今度は私の真左にそれがいて私のおさげ髪の1本を掴んだのです。「おとうさん。もう嫌だ。誰かいるよ。もう降りようよ。」と泣きながら叫びました。すると父は「うるさい!」と言って長く腕を伸ばし、私の頭をかなり強く殴りました。花火は佳境にはいっていました。その後どうしたのか覚えていません。

大人になり、その町を離れてから判ったことです。あの場所は戦時中、外国から連れてこられた人達が過酷な労働をさせられ、亡くなったり殺されたりした場所だったとの事です。

父や母には言ってません。
もう言うことも無いでしょう。






私は花火が嫌いです。



投稿者:ケイコ