私は特殊な町で幼少期を過ごしたと思う。

それは北国の炭鉱町。毎日のように集会場では葬式をやっている。造花の花輪が飾られ、むせかる線香の煙の中で泣いてる人々。子供だった私にとって日常のありふれた光景だった。

小学校の帰り道にその集会場がある。子供達が大勢集まっている。
私もその中の一人。目的があったからだ。
葬式のお供えのお菓子が配られるからだった。饅頭や最中。
当時の子供にとっては貴重なおやつだった。

不謹慎かと思われるが葬式が楽しみだった。


私の家の2軒先にくにおちゃんの家があった。
彼は当時16歳。私よりずっと年上の少年だった。少し障害があり中学卒業後、炭鉱に入った。
仕事の休みの日や夜間勤務の3番方の日などは、私達みたいな子供のリーダー的な存在としてよく遊んでくれた。彼もまだ子供だった。

ある日の朝、学校に行く途中でくにおちゃんに会った。一人で道を歩いていた。
「くにおちゃん、今日は休みなの?学校終わったら遊ぼうね。」と私が言うと、くにおちゃんはニッと笑いながら
胸のポケットから桃山というセロファンに包まれた和菓子を2個手渡してくれた。
嬉しかった。くにおちゃんは立ち止まったまま手を振って、私も手を振って別れた。

その日の帰り道、集会場では葬式をやっていた。また誰か死んだんだ。ふと見るとくにおちゃんの写真が飾ってあった。今朝見たばかりの笑顔のくにおちゃんだった。

昨日の夜3番方で入ってすぐ、ベルトコンベアーに巻き込まれ死んだと後から聞いた。


いつものようにお菓子をもらった。桃山だった。



投稿者:ケイコ