レッカーの仕事、スーパーエースの話⑨です。今回のは、佐藤君が実はあんまり話したくなかった話みたいです。
なぜ話すことにしたかというと、皆さんから受け付けた質問の中に、2つほど気になったというか、まあこういう質問が重なって来るということは、話せって事なんだろうと佐藤君が思いたったからです。
そのため、順序がぐちゃぐちゃになりますので、質問者の方ごめんなさい。

とりあえず、その他の質問を。

Q 物理的な干渉ができない幽霊が水道を出したりするのはどういう原理でしょうか?

A これねぇ、まあ俺が見たまま言いますが(笑)幽霊が蛇口掴んで捻ってるってことじゃないんですよね。幽霊は動かないんだけど、蛇口がね、スルスル回るんじゃなくて30度くらいずつ、一気にというか、キュッ、キュッみたいに回ってます。原理は全く分かりません、すいません(笑)念力とか言っちゃうと、また違う話になるので。

Q 軽井沢バス転落事故で、若い尊い命がたくさん奪われましたが、こういう場合成仏できずに、皆地縛霊になってしまうのでしょうか?強い執着や思いがなければ成仏できるのでしょうか?
今後、このような事故現場は通行しない方がいいのでしょうか?迂回できないとき、霊障を受けない方法はありますか?

A 酷い事件でしたね。まだ揉めてますが、亡くなった方は皆死んだことほぼ気づかないレベルだと思います。即死だったら、もしかしたら現状把握して動けないかも知れないけど、だいたい病院に運ばれてから亡くなったみたいなので、今回の件ではそこまでヤバい場所にはならないんじゃないかと思います。
成仏できるかどうかは、その後のご家族の供養次第でしょうね。
事故現場は、よく呼ばれる、引っ張られると言いますが、確かに無くはない。でも、大抵は事故の起きやすい道路事情ですよ。あまり気にしないことが一番いいんだけど、通るときにどうしても気になるなら、心の中で黙祷を。ホントにやると事故っちゃうからね(笑)

Q 幽霊になったら空飛べますか?

A 前もあったな、この質問(笑)みんな飛びたいんですかね?(笑)残念ながら飛べませんよ。


さて、問題の質問2つですが…

Q 実体のない幽霊が髪の毛を残していくのはどういうことなんでしょうか?

Q 佐藤君のチカラが本物だとしたら、なぜその手の業界に行こうとしないのですか?

回答は、本文中で。


佐藤君が土建屋を辞め、フトン屋に転職したその年の話。まだ研修中だった佐藤君は、ある依頼の話を聞いた日から、嫌な夢を見ることになった。

夢の内容はこんな感じでした。

どこか分からない、薄暗い家の中。自分がいる部屋から襖を開けて廊下に出る。右に進み、Uターンするようにして階段を登ると、真正面の奥にドアノブが取れているドアがある。そのドアは押すと簡単に開き、中は真っ暗。だが、何かが動いている気配だけはする。一歩部屋に足を踏み入れると、左の手首に長い髪の毛が巻き付く。取ろうとするが固くて取れず、凄い力で体がどんどん闇に引き込まれていく。必死で入り口にしがみつき、誰かの名前を叫ぶと目が覚めた。


佐藤君はこの夢を見たとき、中学生の頃にお婆さんが教えてくれた話を思い出したそうです。
もしこの先、髪の毛にまつわる呪詛の類いや、髪の毛が落ちているという部屋、髪を強調する霊に出会うことがあったら、なるべく関わらないようにしなさい。
これは、お婆さんの言葉だそうです。理由も説明されたみたいですが、サッパリ覚えてないとの事(笑)
ただ、髪の毛とは、昔から神仏や冥界に通じるもの、悪い物を溜め込むものと言われているそうで。女性が髪を大切にするのは、髪を洗い清めることで天界に近づくためとか、お坊さんが頭を丸めるのは、悪いものが溜まらないようにだとか。
佐藤君曰く、確かに幽霊は髪の毛長くてボサボサなヤツが多い。

漠然とした不安を抱いた佐藤君。依頼の現場の作業が決まったのは2日前。2日連続で同じ夢を見た。恐らく今日も見るだろうと思い、明日に控えた作業から外してもらえないだろうか、と上司に相談に行きました。
この上司の方が佐藤君にこの仕事を世話してくれた人で、前の土建屋さんと繋がりのある人。佐藤君が見える人だということは知っていて、その人自身もだいぶ見えるらしい。
上司の方は、少し困っていたものの、そんな事を言っていたらこの先仕事できないだろうと、外れることは許してくれなかったようです。ただし、この業界不思議なことは日常茶飯事、霊能者の1人や2人は手配できるとのことで、実績ある霊能者のAさんを手配してくれました。

作業当日、やはり夢を見て起きた佐藤君。左の手首に違和感を覚え、ふと見るとまるで本当に髪の毛で縛られたような跡が、アザのように浮かんでいたそうです。
こりゃヤバいと思ったものの、仕事には行かなきゃならず、支度をしていると携帯が鳴った。知らない番号が通知されている。出てみると、その人はAだと名乗った。
実は、なぜ佐藤君に電話したのか分からない。今朝嫌な夢を見て、なぜか佐藤君に電話しないといけないと思ったらしい。幸い、なぜ自分が呼ばれたかは上司の方から説明されていて、佐藤君の電話番号も聞いていたため、とっさに電話してしまった、と笑ったらしいです。
どんな夢を見たのかと尋ねたら、佐藤君と全く同じ夢。佐藤君は、この時自分が夢で叫んだのは、この人の名前だと思ったそうです。
もう3日も同じ夢を見ていること、今朝は手首にアザができたことを話すと、来ない方がいいと言われた。そりゃ行きたくないけど(笑)行かざるを得ない。だからあなたを呼んだ訳ですから、と説明すると、笑って納得してくれたようです。

現場で初めて会ったAさんは、どこか安心できる雰囲気をまとった、中年のオバサンでした。Aさんは、佐藤君を見るなり、凄い力で守られてるから、大抵のことは大丈夫でしょう?でも今回はちょっと覚悟してね、と言ったそうです。
佐藤君も、その言葉の意味は良く分かっていた。なぜなら、2人が立つ目の前にあるその家の、尋常ならざる雰囲気がそう言っている。佐藤君には家全体が黒い霧の中にあるように見えて、Aさんには燃えているように見えるらしい。
中に入ると、すでにアルバイトと先輩社員が段取りを始めていて、佐藤君もそこに加わりました。Aさんは、遺体のあった場所で手を合わせると、家の中を検索していた。

2時間後、一段落ついたところで休憩になった瞬間、Aさんが佐藤君を呼んだ。呼ばれるままに廊下に出て右に進み、Uターンするように階段を登ると、真正面奥にドアノブのない扉がある。
間違いない、そこですよ、と佐藤君。Aさんもうなずいた。
だが、その扉を開けるには家主の許可が必要。作業は1階のみの予定。
Aさんは、佐藤君とそこで少し話した後、色々とこの家にはありそうだと言って、家主に掛け合いますと言って出ていったそうです。作業の予定は1週間だから、まだ時間はある。

この家での作業内容は、和室の布団の中で亡くなった40代女性が、2週間発見されずにフトン屋出動案件になったというもの。撤去作業に2日、畳張り替えと殺菌消毒と消臭に5日。女性の死因は遺体の腐乱が激しく、解剖は困難なため不明。家主は、この女性の父親。

3日作業をこなす。夢は見なくなったが、左手首にあったアザは、手首と肘の真ん中くらいまで広がった。
作業も山をこえ、あとはほぼ見てるだけの暇な時期に差し掛かった頃、Aさんがやって来た。
許可もらったからあの部屋開けるけど、一緒に来る?と言われ、躊躇なく行くと言う佐藤君。階段を登り、件の扉の前に立つと勝手に冷や汗が出たそうです。
ただ、夢で見たように押しただけでは開かず、ラジペンと定規を上手く使ってドアノブをこじ開けたらしい。

ゆっくりドアを押すと、中は真っ暗。壁を探り電気のスイッチを探す。やがて部屋にパッと電気がつくと、2人は固まった。
部屋の天井、壁にはビッシリと御札、御札、御札…。ガランとして何もない部屋のど真ん中に机がポツンとあり、上にA4サイズくらいの木箱が置いてある。もちろん、それにも御札。
何してた部屋?と佐藤君が問うと、Aさんは恐らく誰かを呪ってた部屋で、その木箱に呪詛の本体が入ってると言ったそうです。
Aさんは、私には怖くてちょっと開けられないと言った。すると佐藤君は、やはり躊躇なく箱に近づいて手に取った。Aさんの制止を振り切り箱を開けると、中には束にされてとぐろを巻くように詰め込まれた長い髪の毛が入っていた。しかも、何か髪の毛の質がおかしい。ボサボサしていて、乾いてはいるが何か液体をかけた跡がある。
佐藤君が触ろうとした時、Aさんが佐藤君を突き飛ばすようにして箱を取り上げたようです。絶対に触ったらダメだと。
髪の毛にかかっているのは血、それも例の亡くなった女性のもの。

髪の毛は、呪いには欠かせない、かつ最強の依り代であり、術者の念を全て吸い伸びる。血をまとわせることで、更に強力になるとか何とか。呪いのことはよく分からないという佐藤君ですが、それがヤバいどころではない物だということだけは分かったようです。

質問の答えです。
Aさん曰く、髪はこの世にあって霊界と通じていて、思いや念をこの世に残すものだそうです。だから霊が何かを訴え現れると、髪をこの世に実体として残して、自分の存在と思いを伝えようとする。呪いにあっては生者を離れても伸びる髪は、怨念を吸い続けるためこの世にあってこの世にないものになる。
原理は分かりませんが、ちょっと調べたら「心霊 髪の毛」でググると面白い理論考えてる人いたのでそちらも見ると面白いかも。

結局、髪の毛は箱ごとAさんが持ち帰りました。もちろん、事情を説明して家主の了承は得たそうです。
数日が経ち、作業が終わっても佐藤君の腕のアザは消えることはなかった。アザは肘まで達し、まるでもののけ姫さながら。
不安になった佐藤君は、その後どうしたのか気にもなっていたため、Aさんに電話してみた。だが、呼び出しはするもののその時は繋がらなかった。
繋がったのは、その日の夜中。Aさんの携帯から着信があった。出てみると、男の声がこう言ったそうです。
「Aはちょっと大変なことになっています。私は、Aと同業のBと言うものですが、彼女の頼みで佐藤君と連絡を取って欲しいと言われて電話しています。」

ちょっと胡散臭いなぁと思ったものの、Aさんの携帯からかかってきているし、疑う余地もない。
Bさんは、開口一番アザの程度を尋ねたそうです。肘までだと言うと、実はAさんにも全く同じ現象がおきていて、もう肩まで来ていると。Aさんより佐藤君の守りの力が強いので、進行が遅いらしい。
この髪の毛の呪いが誰に向いたものかは分からないが、関わってしまった2人もこのままではただでは済まない。アザが首まで達すると非常にマズイ状況になる、と言われたそうです。つまり、死ぬということでしょうね。
呪術に詳しい同業者に協力してもらい、今は呪力を弱めていて、もう少し弱めないと封印も出来ないと。
簡単に燃やしてしまうと念だけが残ってしまい、依り代を無くした念は、もう手がつけられない。時間を掛けて力を弱めて、封印後もゆっくり力を弱めてから燃やして処分するのがやり方だそうで、ここまで強い呪いだと数年は掛かるらしいです。
一応、封印できさえすれば、佐藤君とAさんなアザは消えると思うが、それまでAさんは持たないかも知れないと言われたそうです。

それ以来、AさんからもBさんからも連絡はなく、約1ヶ月後くらいに朝起きたらアザは消えていたそうです。その時、アザは肩のちょっと下くらいまで来ていたみたい。
佐藤君曰く、恐らくAさんは亡くなったと思う。助かったら、きっと連絡して来ると思います。

初めてAさんとあった日、Aさんが家主に許可を取ると言って家を出る前に言われたそうです。
「ちゃんと勉強して、霊能者としての道を歩いたら?」
佐藤君が即答で嫌だと答えると、Aさんは笑って言ったそうです。
「それはきっと、守ってくれてる人の意志かもね。」
佐藤君はよく分からないと言っていますが、俺(TRね)は何となく分かる気がします。
自分の孫には、そういう世界で生きて欲しくない、と思うんじゃないかなぁ?と。
質問の答えは、こんな感じでしょうか。佐藤君に聞くと、嫌なものは嫌だしか言いませんけど(笑)



投稿者:TR