20数年前、
俺は新設の県立高校の1期生で剣道部に所属していた。

その剣道部では毎年、夏休みに学校の体育館を使用して合宿を行なっている。

高校を卒業して大学2年の時にその合宿にOBとして参加した際に副顧問M先生から聞かされた話。

合宿が行なわれる体育館は1階が剣道場、柔道場、体育教員室、トレーニング室、シャワーなどの施設があり2階全面が体育館になっている。

合宿初日は大学の部活が重なり参加出来ず、2日目の午後からの参加になってしまった。

まず体育教員室に行くと顧問S先生、副顧問M先生、俺の1年時の担任でバスケ部顧問の『H先生』や他にも数名の先生方が居られた。

久しぶりに会う先生方は喜んでくれたが少し暗い雰囲気を感じた。
特に『H先生』が。

剣道部以外の部活は午前中で練習が終わっていた為、先生方は帰りはじめ30分もすると教員室にはS先生とM先生、そして数名の剣道部OBだけになったところでM先生が合宿初日の夜(昨晩)に起きた事や俺たち1期生が卒業してから校内で起きた事を語り出した。

合宿初日は大勢のOB、OGが集まった事と初日で生徒の体力もまだ余力があるだろうとS先生の発案で親睦会と称した生徒の体力を削る為のバレーボールを夕食後にすることになった。
19時頃から1時間ほど2階の体育館でバレーボールで汗を流した後、使ったネットやボールなど全て片付けて顧問2人でチェックしながら体育館を施錠し20時過ぎには全員が1階に戻り入浴や就寝準備を済ませた。

その後、22時の生徒の就寝時間にはほとんどのOB達は帰ったが先生の手伝いのため暇なOB3名が泊まる事になり生徒の監視もあるので交代で仮眠を取ろうと話していた23時頃、1人の男子生徒が
『先生、体育館からボールで遊ぶ様な音が聞こえてきて気になって眠れません』
と教員室にやって来た。

教員室にいた全員で耳を傾けると
『トン…トン…トン…』
とボールをコートに突くような音が確かに聞こえてくる。(その場にいた全員がその音を聞いた)

そこでS先生は女子生徒がいる柔道場、M先生は男子生徒がいる剣道場に行き人数を確認したが全員揃っている。

そもそも、鍵は間違いなく施錠したので生徒が体育館に入れる筈は無い。

警備員が常駐していたので警備員室に内線で連絡したが応答が無く、仕方なくM先生と1人のOB(2期生A君)が体育館に確認に行くことになった。
(まだ携帯が無い時代で他に連絡手段が無くこの時、警備員は別のトラブルに見舞われていたらしい。ならば何故、警察に通報しなかったのか聞くと『俺の話を全部聞けば判る』と言われ最後まで聞く事に)

教員室で体育館の照明を点けてから木刀を持ち2階に向かい鍵を確認したが案の定、開けられた形跡は無い。
意を決して扉を開け中に入ると誰も居ないが体育館の真ん中に誰も使っていない筈のバスケットボールが1つ転がっていた…

それを見たM先生は
『あぁ、やっぱり』
と思ったそうだ。

再度、施錠して教員室に戻りS先生に報告していると
『ギャアア~』
と言う悲鳴と共に2期生のAが教員室に駆け込んで来た。

極度の緊張感の解放から尿意を催したAはトイレで用を足し終えた瞬間に背後に気配を感じて振り返ろうとしたその刹那、
【ドン!】
と背中を突き飛ばされたのだと言う。

横に居たAに疑いの目を向けると
『先輩あれは絶対に幽霊っす』
と一言。
その表情は一晩たった今でも、まだ怖いですって顔をしていた。

その話を聞いて何のことやら、さっぱり訳わからん顔をしていた俺にM先生は
『判らんか?転がっていたのはバスケットボールだぞ』
と。

その一言でやっと気づき全身に鳥肌がたったが、それは怖くもあり哀しくもある複雑な感情からだったと思う。

そのあと卒業してから起きた幾つかの事を聞かされたが、ずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。

長くなって申し訳ないが、その幾つかの話の中であと1つだけ書かせてほしい。

俺たち1期生が卒業したあとの新3年生(2期生)のある男子生徒が学校指定の通学バッグの手提げ部分が切れたので体育教員室に買いに来た。(当時、購買部がまだ無くジャージやバッグ類は体育教員室で販売していた。)
その場にいた教師がビニール袋に入って封がされたままの状態で男子生徒に渡した。が、その翌日にまたやって来て
『バッグの中にこんなものが』
と1期生のある男子生徒の名前が刺繍されたジャージのネームプレートをバッグの中から取り出した。

封も開けられていないバッグに入り込む筈の無いネームプレートを。

それを受け取ったのは『H先生』だった。受け取った瞬間に顔が青ざめ、生徒には適当な言い訳をして直ぐにバッグごと交換したそうだ。
(その様子をS先生が見ていた)

実は俺たち1期生の中で卒業するまでの3年間で3件の交通事故があり、その内2件の事故で3人の生徒が亡くなっている。

1人は2年の夏休みにバイクで単独事故を起こして亡くなった男子生徒。彼は1年の時にクラスメイトだった。
そう、ジャージのネームプレートの生徒である。
彼は鈴木とか佐藤といったありふれた名前では無く、割と珍しい名前で卒業生、在校生で他には居ない。

あと2人は3年の冬、深夜に彼氏の車(彼氏同士も友人で4人が同乗)でドライブ中にガードレールに突っ込み大破して4人全員即死という悲惨な事故で亡くなったバスケ部の女子生徒2人。

『H先生』が担任や顧問として直接関わった生徒が亡くなっている。
バイク事故で亡くなった彼は2年の時も『H先生』が担任だった。

話しの流れからすると『H先生』が怨まれていたように思われる方もいると思うが、それは違う。

M先生が最後にしてくれた話。
合宿2日目の朝
『夕べ、来ましたよ彼女たち。』
とM先生は昨晩の出来事をH先生に報告した。
するとH先生は悲しげな表情に一瞬なった後、少し笑顔に戻してボソっと言った。
『そうですか…。そう言えば今日、○○は来るんですか?○○だけですね生きててくれたのは』と

残り1件の事故も彼の教え子が関わっていた。

M先生に言われるまで気がつかなかったよ。

もう、判るよね
『○○』は俺のこと。

亡くなった同級生の追悼集会で人目もはばからず先生の中ではただ1人、大号泣していたのはH先生だけだった。

俺の事故の時も、生きてるのに朝のホームルームで泣きながら説明してくれた事を後からクラスメイトから聞いた。

1年の3学期の朝、登校中に結構派手な事故を起こしたんだ。
自分でも事故の瞬間『死ぬ』と思ったし、警察から連絡を受けた両親と当時担任だったH先生も担当警官が安否を後回しにして状況から説明したもんだから絶対死んだと思ったくらいの事故だった。
(地方紙にも小さく載った)
結果的には色んな偶然が重なって右足の骨折と数カ所の打撲、擦り傷だけで済んだ。
本当に自分でも奇跡だと思う。

多分、3件の事故全て教え子だったのは単なる偶然だろう。
しかし彼等、同級生達がH先生や学校を慕って様々な現象を起こした事は間違いない事実だと俺は思っている。

俺は彼等の分まで精一杯なんて大袈裟に構えて生きてはいないが、

もし、あと数センチの差で死んでいたら俺も彼等と一緒に学校を彷徨っていたのだろうか。とか、
何故、1期生が卒業してから彼等は出て来たのだろうか。とか、
なんでトイレでAをどついたんだろうか?
と考える事は今でもある。

ただ、たまにこうやって忘れないように想い出すだけ。

多少、脚色はしたものの全て本当の話。
信じるか信じないかは皆さん次第ってやつです。

そして、
M先生に今夜はお前が泊まれと言われて泊まったものの俺の元には現れてくれず少しホッとした様な、残念な様な複雑な気分で合宿を終えた。

後日談。
1年後のOB会の席でM先生にその後、どうなったかを確認した。
実はH先生は毎年、命日に3人の御墓参りをしていたそうです。
今まで校内で起きた不可解な現象が彼等に起因することだとは思いつつも対策を講じなかったが剣道部合宿の件が決定打となり夏休みの間に御墓参りに伺い出来る限りの御供養をしたところ、その後は表だって現れることは無くなったそうです。

拙い文章でしかも長文になり判りにくい部分もあったと思います、申し訳ありません。また怖い話とは少し離れてしまった事を併せてお詫び致します。最後までお付き合い頂きありがとう御座いました。

今回、書けなかったあと幾つかの話はご要望があれば書き込みたいと思います。
ベタな内容なので余り怖くはありませんが…



投稿者:ター坊