レッカーの仕事、スーパーエースの話⑮です。

今回は、佐藤君24歳。奥手な彼に、やっとこさできた彼女との話ですね。
実はこの彼女もちょっと霊感体質だったようで、昔からよく不思議体験はしていたみたいなんですが、佐藤君のようにハッキリ見えるわけではなく、漠然と「何かいる?」「何か喋った?」くらいの感じ方。
結局、この彼女(以後ミキちゃんでいきます)とは数年で別れたそうですが、何度か怖い目にあった(あわせた?)みたいですね。
付き合い出してまだ3ヶ月そこそこの2人。毎日が楽しくて仕方なかったでしょう。特に佐藤君は、まさか自分に彼女が出来るとは思ってなかったので、浮かれまくってたようです。

まだ暑さの残る9月末、2人は横浜へドライブに出掛けました。中華街で遅い昼食をとり、黄昏時の某有名公園を散歩していた時のこと。
佐藤君は、公園に入った時から「人ではない人の声」がしてるなー、と思っていたそうですが、大体どこでもあるみたいで、大して気にもしていなかったらしいのですが、ミキちゃんにもどうやら聞こえたようです。

「ねぇ、何かどっかで女の人が泣いてない?」言われてドキッとした佐藤君。実はまだ、自分のそういうことをミキちゃんには言っていなかった。
ちょうどいい機会かな、と思った佐藤君は、実は…と自分のことを打ち明けました。少し戸惑わせたものの、理解してくれたようで、実は私も…と言われたそうです。
そんなこんなで、お互いに見えることが分かった2人でした。

それからしばらくしたある日。仕事が終わって車に戻り、携帯を見るとミキちゃんから数件の着信が。仕事中は携帯を持ち歩かないようにしていたため(フトン屋時代の話で改めて書きますが、色々あったらしい)、気づかなかった。
慌てて折り返すと、怒ったような安心したような声で、すぐ来て!と。理由を聞くと、来れば分かるからと言うので、急いでミキちゃん宅に向かったそうです。

ミキちゃんは実家住まい。家の前に車を路駐し、「着いた」とメールを書いて送信しながら、何気なく2階のミキちゃんの部屋を見上げると、窓に張り付くようにして部屋の中を覗きこむモノが3体。
びっくりして車を飛び出し、ミキちゃんを待たずに家に飛び込んだ。
階段をかけ降りる音が聞こえる。焦っている佐藤君を見て「やっぱり何かいた?」と不安気に言うミキちゃん。
何かいた?じゃないよ、どうしたのアレ?と問いただすと、実は…と話しだした。

ミキちゃんはフリーターで、コンビニで働いている。昨夜、バイト仲間と遊んでいたら、今から心霊スポットに行こうという話しになった。夜も遅かったし行きたくもなかったのだが、周りの勢いに負けて仕方なくついていった。
行った先は、自殺の名所として名高い某橋。自殺防止のフェンスもあり、覗きこむと真っ暗闇で、相当高いんだなぁと思ったと。
姿は分からないが、数人いるなっていう気配は感じたし、谷底からはうめき声がいっぱい聞こえたようです。
この時点で帰りたいと言ったのだが、調子に乗った男の子が川へ降りる階段を見つけ、行こうと言い出した。皆が行くので、やはり仕方なくついていくと、草むらの中を並走するように足音がする。
ヤバイと思って佐藤君に電話しようとしたが圏外。足音は増えて、まるで囲まれているよう。階段を降りきる頃には、悲鳴、うめき声も参加して耳を塞ぎたくなるほど。半泣き状態で帰ろうと言うと、やっと誰かが声が聞こえるとか言い出して半パニックになり、全員走って階段を駆け上がって車に飛び乗ったらしい。
車2台、計7人で行ったのだが、ミキちゃんが乗った車には4人。つまりもう1台には3人乗っている。しかし、前を行く車の中に見える人影は6人くらいはいる。
気配的には、この車にも数人は乗られてると思ったミキちゃん。だからといって誰にも言える訳もなく、お願いだから安全運転で、とだけ言って1人で震えていたらしいです。

部屋に入った佐藤君は、カーテンを開けてみた。窓にベッタリ、男が2人、女が1人。男の1人は顔が半分無い。女は目をギョロギョロさせて半笑い。
すぐさまカーテンを閉めた佐藤君は、ミキちゃんにありのままを言った。どうしたらいい?と言われたが、佐藤君は祓えない。
取り合えず、窓を開けなければ入っては来ないが、もし夜になってインターホンが鳴ったり窓を叩かれたり、その他ドアや窓を開けさせようとする音がしても、絶対に開けないでと。
顔が半分無い男は橋で自殺した人に間違いないのだが、あとの2人はどこかから流れてきて橋の下に溜まっていただけなので、ここにいる3人は比較的危険度低と判断した。

しばらく変な音や足音、声なんか聞こえるだろうけど、聞こえない振りしてほっとけばそのうちいなくなるよ、と言うと、怖いから何とかして!と言うミキちゃんでしたが、何ともできないし、そんなトコ行くのが悪い!と佐藤君が怒ると、渋々納得したようです。

後日談ですが、ミキちゃんの家に来ていた幽霊は、佐藤君の言うように暫くしたらいなくなったそうです。仕事が終わると毎日見回りしてあげたらしいです。
また、ミキちゃんと同じ車に乗っていた人達は特に何もなかったようですが、もう1台の車に乗っていた3人は、全員が何かしらの怪我をしたみたいです。
実際にその状況を見てないから分からないけど、まあ霊障あるだろうね。死なないだけ良かったんじゃない?と佐藤君。

面白半分で行くと、一番怖いのは自殺者だそうです。心霊スポットでも、自殺の名所には特にご用心を。連れて帰ると面倒だよ、とのことでした。



投稿者:TR