夜、釣りをしていた時の話。

俺は瀬戸内海に面する県に住んでおり、瀬戸内海にはいくつもの島がある。そんな、いくつもある島と島の間は、狭いところでは100メートルから200メートルというほど狭く、そういった場所では潮が動き始めるとかなり速い海流が発生する。人が溺れて沖へ流された場合、二度と岸へは戻ってこれないだろう。

瀬戸内では、そういった危険な場所が多く存在し、そういった場所で釣りをする際は海に落ちないよう、常に気をつけていなければならない。私がよく釣りに通う防波堤もそういった流れの速い、危険な場所である。

ある晩、いつものように防波堤の壁に登ってイカを釣っていたが、釣りを始めてすぐに潮が流れ始めたせいで釣りにならなかった(仕掛けが流されてしまうから)。仕方なく防波堤に座ってダラダラとエギ(イカ専用のルアー)を投げては巻いてを繰り返していると、後ろから

『こんばんは、釣れてますか?』と声がした。

俺は、新しく釣りをしに来た人かと思い、

『いや~、流れが速くて全然ダメですね~。』

と言いながら振り返ったが誰もいない。あれ?っと思う暇もなく、少し離れた隣で釣りをしてたおっちゃんが返事をしたもんだから、「なんだ、このおっちゃんが話し掛けてきたのか。」などと考えつつ、「いつぞやに大物を釣り上げた」だの、「どこぞやの港でタチウオが上がってる」だの、あることないことを話していた。

そのうち、潮の流れがおさまってきたので、「そろそろ本気を出すか」と思い俺は立ち上がった。

その時、





『ド ン ッ !!』





っと俺は何者かに背中を強く押され、海へと転落してしまった。一瞬、何が起こったのか理解できず、そのまんま大の字で着水したと思う。
海に飛び込んだら、一瞬上下が分からなくなるのな。そのせいで、結構パニクって、持ってた釣り竿を離してしまった。が、そんなことを気にする暇もなく、なんとか浮上して、「ヤバイ、流される!!」と思ってウワー、ウワーと水面でもがいてると、

『大丈夫か!!掴まれ!!』

と言って、隣にいたおっちゃんがタモ網(柄の伸びる長い網)を伸ばしてくれてなんとか助かった(常夜灯の明かりはまさに後光、この時は神様に見えた)。
そのまんまおっちゃんに防波堤から海へと延びるハシゴまで誘導されて、無事帰還。おっちゃんは、

『なんや、急に落ちるけんびっくりしたわぁ~。流れが遅くて助かったのぉ。1人のときは気いつけやぁ。』

とかなんとか得意げに言ってたと思う。とにかく、俺はおっちゃんに礼を言いつつ、そそくさとその場を退散した。

帰りの車の中で、俺はその時のことを冷静に考えた。
釣りをしていた時、おっちゃん以外の何者かが俺に話し掛けてきたこと。そして、俺がおっちゃん以外の何者かに押されて海へ落ちたこと。
しかし、人がすれ違うのも難しい防波堤の壁の上で人の背中を押すには真横に行かなければ無理であり、真横に誰か来れば当然、すぐに気がつく。そもそも、誰かが歩いて来た時点で足音や気配に気がつく。
だが、今回は全く気が付かなかった。そして、俺を押した奴の姿は、俺もおっちゃんも見ていない。
ということは、幽霊か何かだろうか?

結局、犯人の正体は分からず終いだが、俺は今だにあの港に足を運んでいる(釣りバカ)。いつか犯人の正体が分かるかもしれないからだ。
もし、犯人を見つけられたら、あの時海に落とした釣り竿の恨みを晴らすつもりだ。

---以上、俺が実際に体験した話。
怖くなかったらゴメン。
また暇があれば、小学生の頃の体験談でも投稿したいと思います。2016/3/14


投稿者:瀬戸内ジョン