レッカーの仕事、スーパーエースの話22です。

今回は、大分昔の話になりますね。佐藤君が子供の頃に体験した話です。
この4月に人事異動などがあって、俺も佐藤君もちょっとだけ出世しました(笑)その時に飲み会あったんですが、前から気になってた質問を佐藤君にしてみました。

「最初に見た幽霊って覚えてんの?」

最初かどうかは分からないけど、一番古いのは…と言って話してくれました。

肌の青白い、痩せた女。髪の長さは腰まで。いつも同じ場所に立って、うつむいて、体はユラユラ揺れている。下から見上げても何故か顔がよく見えない。あの頃は分からなかったが、今にして思えば白いワンピースを着ていた。
これが、佐藤君の覚えている最古の幽霊の姿だそうです。

保育園に通っていた佐藤君は、お母さんが入院中のためお婆ちゃんに送迎されていました。仕事の関係からかお迎えが遅く、いつも最後になっていたようです。
皆がお母さんに連れられて帰っていく中、やはりお迎えが遅い数名と、猫の額ほどの保育園の庭で遊ぶのが毎日の日課でした。

お迎えを待っている数名も、いつしか一人減り、また一人減り、最後の友達がお母さんに連れられて帰る頃、その女は決まって同じ場所に現れた。
保育園を囲む、低い緑の格子のフェンスの外。砂場の脇だったそうです。

初めは、毎日来ているし誰かのお母さんだろうと思っていたらしいんですが、よくよく考えれば友達は皆帰って、庭には自分だけ。保母さん達も見向きもしない。
この頃になると、季節によっては日が傾いて暗くなりだす時間。「○○く~ん!(佐藤君の下の名前)中に入って先生と遊ぼうね~!」と、保母さんに促されて建物に入って、お婆ちゃんが迎えに来て帰る頃にはもういなくなっていたみたい。
この頃の佐藤君は、幽霊と普通の人間の区別がつかなかったようで(そもそも幽霊という存在を理解していなかった)、今のように違和感を感じたり、見てすぐ分かるということがなかったようです。

ある夏の日、いつも佐藤君と最後まで残る女の子が、たまたま体調不良か何かで保育園をお休みした日だった。
いつもより早く一人になってしまった佐藤君は、何気なく砂場の方を見た。いつもの女の人がいる。保母さん達は、子供達が引けた後の掃除やら事務仕事でまだ佐藤君に声はかけてこない。
前から気にもなっていたし、遊び相手もいなかった佐藤君は、その女の人に近づいた。
とはいえ、いきなり声をかける勇気はなく、砂場で遊ぶ振りをして、あわよくば女の人が話しかけてくれたらいいな~と思っていたそうです。

砂場で遊びながら、チラチラ女の人を見る。相変わらずうつむいて揺れている。話しかけてくる様子はなさそう。
少しずつ距離を詰めながら、自分の存在をアピールする。でも、女の人は興味を示してくれない。
業を煮やした佐藤君は、フェンスを挟んで女の人の真下に移動した。下から見上げると、その女の人は異様に背が高い。お婆ちゃんや保母さんの比ではない。多分、3m近かったんじゃないかな?と佐藤君。子供の頃だから、外見での判断は付きにくかったみたい。

下から見上げても、顔が分からない。髪の毛に邪魔されているのもあるが、黒い靄がかかったよう。
「誰かのお迎え?もうみんな帰っちゃったよ?」佐藤君が言うが、女は無反応。
「先生のお友達?」佐藤君がまた聞くが、やはり女は無反応。
しばらくの間佐藤君の質問が続くものの、女は依然として無反応のままでした。

何も話してくれない女に、少しずつイライラしはじめた頃、保母さんが佐藤君を呼んだ。「○○く~ん!中に入って先生と遊ぼうね~!」いつもの呼び声。
「は~い!」佐藤君が大きな返事をしながら保母さんの方を向く。保母さんは手を招いて佐藤君を呼んでいる。真後ろにいる女には、気づいてもいなさそう。
佐藤君は、「もう中に入らなきゃ。また明日ね」とサヨナラを言いながら再度女の方へ振り向いた。

その瞬間、今まではるか頭上に在ったはずの女の顔が目の前にあった。
さすがにビックリした佐藤君は、「わぁっ!」声を出して砂場に尻餅をつく形になった。その体勢のまま、少し後退りする佐藤君。
女は、フェンスを越えられないのか、フェンスに手を付いて上半身だけを佐藤君に近づけた。

この時、初めて佐藤君はこの人は普通の人間じゃないと思ったそうです。
女は、佐藤君の顔ギリギリに自分の顔を近づけると、掠れるような声で「ねぇ、ボク?ヒナコちゃんって知ってる?お迎えに来たの」と言った。
恐怖にひきつる佐藤君は、声も出せずただ首を横に振ったらしい。
すると女は、「そう…」と寂しそうに言って体勢をもとに戻し、足元から消えていったそうです。

佐藤君は、一目散に建物に駆け出し、今あったことを保母さんに話しました。が、園児が半狂乱で喚くことが伝わる訳もなく、軽く流されてしまいました。
ただ、佐藤君の周りには誰も居なかったよ、とは言われたらしいです。

真相は分からないけど、多分あの保育園にヒナコちゃんって子は通ってたんだろうなぁ。んで、何かで亡くなってしまって、あの女の人(お母さん)もショックでなのか、精神的におかしくなってしまったかで自殺して、いつまでもお迎えに来てたんじゃないかな、と佐藤君は言ってました。

幽霊という存在がハッキリと分かったのは、小学生になってから。お母さんの病院の化け物クラスの幽霊が怖いと、お婆ちゃんにカミングアウトした時、お婆ちゃんから説明を受けたからだそうです。(「祈り」の話参照でお願いします)

それまで、何度も幽霊を見たり怖い目にもあっているのですが、幽霊という言葉さえ知らない佐藤君は、「怖い方の人」と呼んでいたらしいです。


投稿者:TR