先日 福島県I村に不思議な話をする老人がいると言うので早速取材に出掛けた。
いや 老人とは言っても周りの人々がそう言うだけで 私には40代位にしか見えなかった。

その老人の話はこうだ。

昔 家の裏に池があって そこに大きな鯉が棲んでいた。
7~80cmはあったと思う。
ある日 父がその沼を埋めると言い出した。
母が畑にしてしまおうと提案したからだ。
私は何か嫌な予感を感じ反対したが聞き入れてもらえなかった。

翌日 私は投網を持って池へ行き3匹の鯉を捕まえて大ダライの中に入れそのタライごとリヤカーに固定し 裏山の沼へと運んだ。
朝早くから始めたのに沼に着いたのは もう夕方だった。
私は鯉を沼へ放した。
ホッと一息ついて帰ろうとすると 何やらプカプカと3匹の鯉が水面に顔を出し私に何か訴えかけているようなのだ。
よく耳を澄まして聞いていると 妙に冴えざえとした声で

「もうおまえのちちはしぬ・・・またおまえのははもしぬ」
 私はギョッとして 沼のほとりにすくんでいると
3匹のうち 一番大きい鯉が顔を出し
「おまえのおやはしぬ・・・おまえはすえながくいきよ」
そう言ったきり 沼の中へ消えていった。

その後私は 真夜中に家に着き 父母にえらく叱られた。
私は鯉の話を正直に話したが 笑い飛ばされ相手にされなかった。

しばらくして池は埋め立てられ タバコ畑になった。
翌年は天候にもよく恵まれ大収穫となった。
しかし喜びもつかの間 風邪をこじらせ肺炎になり 父母共に相次いで死んでしまった。
が・・・私はまだ生きている。


そう語るその人は 老人とは言うが 私にはどう見ても40代位にしか見えなかった。


投稿者:ぶうたらこん