レッカーの仕事、スーパーエースの話33です。

関東ももうすぐ梅雨明け。今年は暑いので海に行く人も多いと思います。と言う訳で、嫌がらせのようにこんな話を(笑)

中学を卒業した次の年の夏。フリーターとしてはぶっちぎりで若い佐藤君は、幽霊が見えると言い振らしていたことも手伝って、バイト先のお兄さんお姉さんからは相当可愛がられていました。(実際何度かの怪現象を言い当てたり実績もあったらしい)


大学生も含む20代のグループに紛れて、15歳の佐藤君も海水浴に連れて行ってもらえることに。
予定としては1泊2日。夜中に出て朝から泳ぎ、近くのキャンプ場で1泊。翌日も1日遊んで夜に帰宅。

当時バイトしていたのは、とある食品会社の工場で年中無休。どうやって休むかというと、月に最低4日、自分が好きなときに休むシステム。極端なことを言えば、1日~4日まで連休して5日~30日までぶっ通しで働いてもOKらしいです。最低4日なのでそれ以上休んでももちろん大丈夫。
まあ何が言いたいかと言うと、簡単に、それも好きなだけ休みを合わせて取れるということで。近場の若者はクチコミでこれを知っていて、意外と若い人が多く働いていたんだそうです。

佐藤君一行が向かったのは太平洋側の某所。グループの1人の案内で、穴場的ないい場所という触れ込みだったようです。
夜中の1時に集合して、車2台8人で出発。車内でもワイワイ騒ぎ、午前3時半頃現地に着いた頃には、みんな眠くて朝まで寝ようということになりました。

佐藤君はというと、興奮から全く眠くない。若いのもあるのでしょうが、海水浴も初めての経験。気持ちはわかりますね。
皆が車で目を閉じて行く中で、1人外に出てみました。
街灯もなく真っ暗な海辺の駐車場。響く波音と潮風。「夏」を本当に実感している時でした。

波音に紛れて、どこか遠くから鼻歌のような、女性の歌声が微かに聞こえてくる。
駐車場は高台にあって、暗くて見えないが階段を降りていくと海に行けるであろうことは想像できた。駐車場には他の車はなく、もちろん人もいない。
歌声は、大きくなりはしないが、止むこともなく、ずっと聞こえている。
こんな波の音が大きく聞こえるのにこんな微かな歌声が聞こえるのは、余程近くで歌ってないとまず聞こえない。それが聞こえるということは、生きてる人の歌声ではないということだそうです。

特にヤバそうな訳でもないし、まあいいかーと思っていると、車のドアが閉まる音がして誰かが降りてきた。大学生のA子さんでした。
聞くと、トイレに行きたいと。探せばあるのかも知れないが、暗すぎて全く分からない。あと30分もしたら少し明るくなるから待ってたら?と言うと、漏れそう!と(笑)
じゃあ誰も見てないし、その辺でしちゃえば?と言うと、私女です!と。
結局整理現象には勝てず、砂浜ですることにしたのだが、怖いから着いてきてと懇願されて仕方なく階段を降りて砂浜に向かいました。

A子さんが用を足している間、佐藤君は波音に誘われて海の方へ歩き出した。波音がさらに大きくなる。
すると、すぐ近くから「ふふふ」と女の笑い声が。もちろん誰もいないし歌声の主かどうかも分からない。
何か海はいっぱいいるってホントなんだなーと思っていると、A子さんが悲鳴をあげた。
ビックリして駆け寄ってみると、誰か足掴んだ!立ち上がろうとしたら左足掴まれた!と。何かいない!?と言われて見るが、特に何もいなかった。
でも、さっきから歌声聞こえてるし、今さっき耳元で笑われたし、何かいるかもねと言うと、怖いから戻ろうということに。
一緒に駐車場に戻ると、A子さんはそそくさと車に乗り込みました。佐藤君も少し寝ようかな、と車に戻りました。

目が覚めると、すでに太陽は登りみんながワイワイ準備をしている。
イルカを膨らまし、浮き輪を膨らまし、パラソルだのサマーベッドだのと忙しそう。
日が登り改めて見ると、駐車場の下はすぐ砂浜。夜中は暗くて全く見えなかったけど、ホントに目の前海だったんだなぁと思い景色を眺めていました。

とりあえず午前中は遊び、昼食後全員でキャンプ場に移動。手続きやらテントや釜戸の準備などすると、あっという間に夕方。
そこからは少し自由行動で、夜は定番のバーベキュー。酒も入ると、誰ともなく「佐藤、怖い話しろよ」となるのは必然でした。
手始めにといくつか体験談を話し、昨夜の歌声と笑い声、A子さんの話をすると、ここでやろうと思ったけど、花火海行ってやろうぜ、と海へ行くことに。

キャンプ場から昨日の駐車場は距離があるので、近くの海岸へ。一度道路に出て防砂林を迂回すると、岩壁に囲まれるような岩場と猫の額ほどの砂浜がある場所に出た。

と、急に佐藤君の足が止まる。
どした?という声に、ここは止めようと言う。何かいるのか?と言われ、困ったように「今はいないけど、多分集まってくるよ」 と返す佐藤君。
皆は半信半疑。佐藤君がバイト先で能力を披露しているのを知ってる反面、それでも幽霊は見えてはいない自分たち。
そこそこに歩いて来て戻るのも嫌だし、さらに今から別の場所というのも面倒だったのでしょう。
とりあえず、何かあったらすぐに逃げようということで、花火を始めました。

花火が始まると、皆はテンションMAX。佐藤君の話など忘れて大いに楽しんでいました。
楽しめないのは佐藤君。
最初に感じた違和感は、「静かすぎる」ことでした。幽霊がいない場所というのは、神聖だったり(神様がいるところ)故意に作ったり(結界など)しないと、通常では無いんだそうです。
特にこの場所は岩壁に囲まれて空気が溜まっていて淀みがあり、幽霊が居やすい、出やすい場所に感じたのに、全く幽霊がいなかった。
この全くいないが怖かったようです。嵐の前の静けさに感じたみたい。

それでも、1時間ほど花火を楽しんだ一行。それが崩れたのは、B君の一言でした。
岩場に置いたカバンに波がかかり、潮が満ちてきたことを感じた時。B君は、カバンをどかそうとして歩き出した。
満ちてきた海水が砂浜ごとB君の足を濡らす。波が寄せ、帰ると、B君の足は砂に埋まっていく。
カバンを手に取り、さあ戻ろうとした時。足が抜けない。まるでコンクリートで固められたように、足首から下が動かない。
ふと足元を見ると、何か黒いものがまとわりついている。最初は海藻かと思ったようです。次の瞬間、B君は
「佐藤ー!助けて!!」
と叫んでいました。

その声にハッとする一行。佐藤君はダッシュでB君に駆け寄りました。数名が駆け寄ろうとするのを、来るな!と静止して。
B君は半泣き状態。見れば、足に計6本の手がまとわりついていたそうです。
見えてる?と聞くと、何度もうなずくB君。佐藤君は、俺がBさんに触ったらこの手は離れるから、その隙にダッシュでお願いします。一瞬だからね!と言うと、B君の肩に触りました。
その瞬間、本当に黒い手が6本ともパッと足を離しました。「逃げろ!」と言う佐藤君の声に必死でその場を離れるB君。
皆の元に辿り着くと、何があったの?と質問責め。でもまだ終わっていなかった。

B君の後を追う佐藤君が、走りながら「みんな逃げて!ヤバいヤバい!」と叫ぶ。
霊感のある数名は見えたようですが、佐藤君の後ろから、何十人という黒い人影が迫っていたそうです。
現場は大パニック。見えない人は、え?何が起きてんの??みたいな感じでしたが、釣られるようにその場から逃げ出しました。

海辺から離れると、当然何が起きたのか説明を求める声が。
B君が興奮しながら概要を話すと、佐藤君が付け足して状況説明。
「Bさんの足を見れば嘘かどうかは分かる」
という佐藤君の言葉に全員がB君の足を見る。
B君の足には、クラゲに刺さされたかのような、ミミズ腫れになった指の跡がしっかり着いていたそうです。
それを見て騒然となる一行。昨日の私のも?とA子さんが言うが、それはまた別だそうで。
とにかく海から上がってきている数が半端じゃなかったし、多分何人かはついてきて…と話している真横で、防砂林の中からペキ、パキ、と誰かが歩く音が。
その瞬間、全員がダッシュでテントに戻りました。

誰が何かした訳ではなく、ただ場所が悪かったということで、B君にも霊障が残るわけではないと思う、という佐藤君の言葉に落ち着いた一行は、疲れもありすぐに就寝したようです。
これはそのメンバーには言わなかったそうですが、実は2人ほどずっとついてきたようで、テントは2つ(男用と女用)あったのですが、男用のテントの外を朝までウロウロしていたそうです。
唯一、一番霊感の強いと思われるC子さん(佐藤君の後ろから来る凄い数の霊も見えてた)が、朝起きて佐藤君に「昨日テントの周りを…」と言ってきたらしいですが、佐藤君が口止めしました。怖がらせるだけだから、と。

それでもめげない若者たちは、その日もしっかり海で遊び、予定を消化して帰ったそうです(笑)昨夜逃げ帰ったので、後片付けにはちゃんと行ったらしいですよ。
ちなみに、キャンプ場の管理人さんに聞いたところ、例の岩壁に囲まれた場所は年に数体は遺体が流れ着くそうです。
やっぱりそういう場所なんだよね、と佐藤君は言ってました。

海というと、泳いでいて引っ張られる、引きずりこまれる、という話が目立ちますが、上がってくることもあるんですね。
皆さん、特にこの夏海に出掛ける予定の方は、水難事故等に充分気をつけて楽しんで下さい。


投稿者:TR
投稿者のTwitter:@tr_sato