私が子供の頃の話です。

小学五六年生くらいの頃、私によくしてくれていた大叔父さんが亡くなりました。
優しくて、面白い人で、いつも飴をくれたことを覚えています。

葬式に行くというので私もついて行きたがったのですが、まだ子供だからだめ、ということで、留守番を任されてしまいました。
両親が帰ってくるのは八時頃だというので、暇つぶしに本でも読もうと考えて、布団に入りました。

(今もそうですが、読書をするとき、布団のなかが一番集中できるんです)

しばらくして、いつの間にか眠ってしまったらしく、「今、何時だろう?」と起き上がろうとしますが、身体が動きません。
どうやら金縛りみたいです。なんらかの気配も感じます。
最初は、あぁ、大叔父さんがお別れにきたのかなぁ、なんてのんきに考えてたんですが、なんかおかしいんです。

怖い。怖いんです。

なんか、うまく表現できないんですが、『ものすごく恐ろしいもの』が部屋のドアから近づいてくる感覚があるんです。
音はしなくて、大きさは扇風機くらいの『それ』が、ずるずると引きずってくる感じ。

……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるずる……ずるず――

それは、私の枕元でぴたっと止まりました。
泣き出しそうなのをこらえて、よりぎゅっと目をつむります。

そのとき、

「○○ー! ただいまー」

母親の声です。

たすかった! お母さんが帰ってきた!

身体がふっと楽になりました。

目を開いて、顔を上げたところで『それ』と目があいました。

「――ひっ」

声もでませんでした。

目があった『それ』――証明写真のように、スーツを着た、肩から上だけの男の人が、口を開きます。

「ねぇ○○! 寝てるのー?」


ここで私は気絶? してしまったようです。

後から聞いた話では、両親が帰宅したとき、私は普通に寝ていたらしいです。
この話をしたときも「ただの夢だろう」とぜんぜん信じてもらえず……。でも、あの臨場感というか、恐怖感は絶対に夢じゃないと思っています。

母の声を出す、スーツの男の人が何者だったかのかは、いまだに分かりません。
そのときから、今に至るまで、大きな怪我とかありませんし、悪いものじゃないと思いますけど……。


投稿者:わーに