レッカーの仕事、スーパーエースの話37です。

今回はフトン屋さん時代後期の話。

冬だったそうです。ある日、先輩のAさんがぶしつけな質問をしてきました。
「確実に幽霊の出る部屋知らないか?」
この人は何を言ってんだろうか?と思ったんですが、理由を聞くと納得。

Aさんの後輩で、自称勇者のB君。勇者を名乗るだけあり、幽霊など存在しないし恐くない。名だたる心霊スポットにも夜な夜な赴くが、霊現象など起きたことがない。ホントに幽霊というものがいるのなら、是非見せて下さいよ!と飲み会の席で罵倒されたらしい。

事の発端は、大学時代のサークル仲間数人で同窓会的な飲み会を開いたこと。B君もそこに来ていました。
大学卒業から数年、近況報告でAさんが特殊清掃の仕事をしていると言うと、幽霊見たことあるか?と質問が殺到。幽霊かどうかは分からないが、不思議なことは度々あるよと話していると、何が気にくわなかったのか噛みついてきたようです。
そこからは、売り言葉に買い言葉。絶対に霊現象が起きるアパート紹介してやるから住んでみろ!ああ分かりましたよ!というノリだった。

Aさんは佐藤君とも何度も仕事をしているので、佐藤君のそれは理解している。お前ならどこかの現場思い付くんじゃないか?と思ったとのことでした。

佐藤君はそれを聞くと、間髪入れず言いました。
「Aさん、あそこ紹介したら?」
あそこ?ふと考えたAさん。即座にピンときたようです。

「あそこ」とは。
佐藤君の会社では有名な物件。過去3年間で3回、年1回ペースで特殊清掃の依頼の入った筋金入りの事故物件。それも佐藤君の会社が受けたのが3回であって、それ以前にもあったかも知れない。
繁華街から奥まったところにある2階建て8部屋のアパートで、全室ワンルームの独り暮らし向け。築15年(当時)。
佐藤君もAさんもここの作業に噛んだことはなく、あくまで話だけで見たことはない。

会社のパソコンで作業履歴を調べると、3件とも状況がほぼ同じなのが、作業指示書から伺えた。害虫駆除と殺菌に、フローリングの張り替え。恐らく、死後かなり経って発見されて液状化していた。
死因等のことは分からないが、多分全員同じ死に方じゃない?と佐藤君。

最後の作業が10ヶ月前。担当者はCさん。
お願いして管理会社に連絡を取って貰うと、大家さんと話して1年ほど空き部屋で寝かせていることろです、との返事。
詳しく理由は話さなかったが、事故物件で構わないから住みたいという人がいるんだけど、賃貸契約できますか?と聞くと、アッサリOK。
しばらくして、B君は本当にその物件に引っ越しました。


結論から言います。

B君は2週間で部屋を出ました。というより、入院して親御さんが解約しました。
以下はAさんがB君から直接聞いた2週間の出来事です。

3日目までは、全く何も起こらなかった。

4日目、仕事から帰りコンビニで買った弁当とビール数本で、テレビを見ながら夕食。部屋の中央に置いたローテーブルに床座り。
バラエティー番組で、面白い場面で「はははは」とB君が笑うと、同じタイミングで女の笑い声がした。
ギョッとして向き直ると、テーブルを挟んだ向こう側にポニーテールでTシャツ、短パンの女がテレビを見ている。
え、誰!?どこから入ってきた?と頭では混乱しながらも状況を理解。でも何故か声にならない。
女はB君に「この番組面白いよねー」と、まるで彼女か何かのように、馴れ馴れしく話す。
ハッと気づくと朝。テーブルに突っ伏して寝ていた。夢だったのか。変な夢だったな、と思った。

7日目、仕事から帰ると、どこかの部屋からいい匂いが。焼き魚かな?最近食べてないなぁと思いながら鍵を回しドアを開けると、自分の部屋からその匂いがしていた。
ビックリして電気を点けるが当然何もない。煙もない。でも匂いは充満している。
誰かに不法侵入されたかと思ったが、盗られた物があるわけでもなく、匂いはするが料理をした形跡もない。
不思議だと思いながらも、霊現象ではない、何か理由があると思った。

10日目、友人と電話中。事故物件に住んでいるから週末泊まりに来いと言うと、同棲してんの?彼女できたなら紹介しろよ、と言われた。
何のこと?と聞き直すと、すぐそばで笑ってんの彼女でしょ?と言われた。回線の混線だと思った。

11日目、風邪か?体調が悪くなり、薬を飲んで早々にベッドに入った。
真夜中だと思う。突然玄関ドアが開き、スーパーのビニール袋のガサガサ音。電気がパッと点いた…気がする。目が開けられない。
女の声で「ごめんね、遅くなっちゃった。今ご飯作るからね」と言われた。
部屋間違えてませんか?と言いたいが声が出ない。体も動かない。金縛りだったのかも知れないが、風邪のせいだと思った。
気づくと朝だった。リアルな夢だったな、と思った。

12日目、体調が戻らないまま仕事。フラフラしながら帰宅すると、「お帰りー」とポニーテール、Tシャツ、短パンの女が駆け寄ってきた。部屋間違えたか?と思うが意識が朦朧として考えられない。女に手を取られて部屋に入る。
普通に会話し、一緒にご飯を食べて、何故かそれが当たり前のように思えた。
「体調悪いなら明日は休みなよ」と言われて仕事先に休む連絡を入れた。

13日目、起き上がれない。ふと見ると、彼女が泣いている。体を引きずるようにベッドから這い降りて、テーブル越しに問いかける。
女はB君に「私のこと好き?」と聞いた。何故か好きだよ、と答えてしました。
女はにこやかに笑うと「じゃあ、一緒に来て」と言った。どこへ?

14日目(正確には16日目)、気づいたら病院だった。睡眠薬を多量に飲んで昏睡していたらしい。発見したのは、泊まりに来る約束をした友人。
何度かけても電話に出ず、おかしいと思い家に来た。呼び鈴にも応答なし。ノブを捻るとドアが開いたので覗いてみたら、部屋の中央でテーブルに突っ伏して倒れていた。
回りには多量の睡眠薬の箱。即救急車を呼んだ。

B君本人は、どこでどうやって睡眠薬を手に入れたのかも覚えていないそうです。
実際には、仕事(フリーターらしい)は無断欠勤、電話連絡はしていないみたい。
B君は、幽霊は見ていない!とそれでも言い張っていたようですが、もう事故物件には住まないと事実上の白旗は上げたそうです。

佐藤君はこの話を聞いて、絶対その部屋には行きたくないと思った、と言っていました。恐らく、その部屋の最初の自殺者は彼女だろうとのことです。
彼氏と住んでいて、別れ話の末に睡眠薬自殺。以来、入居者を誘ってんだろうね。というのが、佐藤君の見解だそうです。

ちなみに、そのアパートはまだあります。
 


投稿者:TR