レッカーの仕事、スーパーエースの話最終回です。

ツイッターの方では報告させていただきましたが、仕事の関係で投稿が厳しい状況になりました。またそのうち投稿できたらと思っていますが、とりあえず一区切り。

この話は、佐藤君が17歳の夏のこと。
バイトに精を出す佐藤君を尻目に、同級生達は高校の夏休み真っ只中。
ある日の夜、中学時代はさほど仲がいい訳ではない、単に同じクラスだったというA君が、佐藤君のバイトするコンビニに立ち寄りました。

時間が経ったからなのでしょう、久しぶりに会う同級生同士は懐かしんで、携帯電話を教え合いました。バイト中ということもあり、その場はそれで終わりましたが、後日A君の方から連絡があったようです。

内容はと言うと、仲間に久しぶりに佐藤に会ったと言ったら、みんな会いたいと言っている。ただ、バイト先に押し掛けるのも迷惑だろうから、予定を合わせて軽く同窓会でもやらないか?とのこと。佐藤君はすぐにOKしました。

当日はカラオケ屋で遅くまで騒ぎ(今のように未成年は…とそんなに言われない時代だった)、そろそろお開きかな?という頃、参加者の一人B君から「佐藤、この後俺んち来ない?」と言われたそうです。
その趣味はないです、と丁重に断ると、ふざけんなと頭を叩かれました。

理由を聞くと、ただ一言。
「多分、お化けがいる。」

カラオケ屋で佐藤君とB君の話を聞いていたA君と、面白そうと言って無理に着いてきたCさん(女)、それと佐藤君の計4名がB君の家に
行くことになりました。

B君の家は普通の戸建て住宅。B君が小さい頃に建てているので築15年ほど。

玄関の前に立った瞬間。
「B、ご両親元気か?」
佐藤君が突然言いました。変な顔をするA君とCさん。青ざめるB君。
「何で分かんだよ。やっぱお前ホントなんだな?とにかく見てくれよ。」
B君は急ぐように鍵を捻ると玄関のドアを開けました。同時に家の中から湧き出すように溢れる黒い靄(もや)。

家には誰も居ない様子。B君が電気を付け、皆が後に続いて家に上がる。
何も言わず歩くB君。2階に上がり、一つだけある襖の引き戸の前に立つと、振り返って佐藤君を見た。
「ここ、和室で親の寝室なんだけどさ。」

佐藤君には聞こえていました。
部屋の中を誰か歩いている。畳を擦るようにシュッ、シュッと。
「俺の部屋、隣なんだけどさ。親寝てたり居なかったりしてんのに…」
佐藤君はB君が言うのを遮りました。
「話し声、足音でしょ。今も歩いてるよ。」

マジかよ?とA君とCさんが襖に近づく。
「何も聞こえねーよ。つか開けていい?」
A君の言葉に佐藤君が返しました。
「多分大丈夫。」
何だよ、多分って。皆がそう思ったはず。言葉にはしなかったようですが。

A君がゆっくり襖を開ける。黒い靄の原因はやはりこの部屋の中にある。
廊下の灯りで照らされた部屋。普通なら、暗いながらも中の様子くらいは分かる。でも佐藤君には真っ暗闇に見えたそうです。
いつの間にか、足音はしなくなっていた。B君が部屋の電気をつける。

6畳の本当にありきたりの和室。左の壁に床の間があり、窓ガラスの前に障子の引き戸がある。結露か、障子が濡れてシナシナになっているのが分かる。
「何か、湿度すごいねこの部屋」
Cさんが言うと、「前はこんなんじゃなかった」とB君。

佐藤君は、何も言わずに床の間の前に立ちました。後ろ姿の女性が書かれた掛け軸が描けてあり、その下に小さい壺と何だか中国風の置物。
皆が佐藤君を見つめる。佐藤君はB君に言いました。
「ご両親どうしてる?それと、Bってこの部屋入らない?」

聞くと、お父さんは少し前から疲れが抜けない、体調が悪いと言っていて、ある日朝起きて来ないので見に行くと昏睡していて、そのまま入院。
お母さんもそのショックと看病疲れからか最近は体調が悪く、今は実家にお世話になりながらお父さんの病院に通っている。
B君もお母さんの実家にいるのだが、今日は同窓会だからこの家に帰ると言って出てきたんだそうです。
だからさっき、ご両親元気?と聞かれてドキッとしたらしい。
もう一つの質問、この部屋に入らないかに関しては、全く入らないとのこと。

「正直ね、この部屋に居たくない。怖い。」
佐藤君が言うと、皆怖くなったんでしょう、取り敢えず出ようと言うことになり、B君の部屋に移動しました。

どこで手に入れたのかも問題だが、とにかくあの掛け軸はヤバい。

多分あの掛け軸を書いた人は女性で、自分自身を書いている。日本人じゃない。
目的は、恐らく誰か(多分旦那さんか彼氏)を呪うためだと思う。
もう目的は果たしているけれど、念が消えていないから持ち主になってる人を手当たり次第呪っている、ということらしいです。

にわかに信じられないA君とCさん。B君は何となく信じた様子。
「歩いてる足音とか声、女だと思う。何か言ってて、でも何を言ってるか分からなかったのは、日本語じゃなかったからだ。」
佐藤のおかげで今分かった、とB君は震えて言いました。

あの掛け軸の念は相当、お祓いなんて焼け石に水だと佐藤君。
ただ、分かったことがある。B君も同じ家に住んでいるから呪いの対象なのかと思ったが、家に上がってもその兆候がなかった。
だから、お父さんとお母さん(呪った人物からしたら旦那さんと浮気相手)だけを目的としている。

買ったのか、貰ったのか分からないけど、前の所有者がもし生きてるなら、手を離れれば呪いの効果も無くなるんじゃないか?それが佐藤君の見解でした。

佐藤君が言い終えたその瞬間。隣の部屋からドーン!と誰かが壁を凄い力で叩いた。家自体が震えるような振動。
何今の!?とパニックになる。と、隣の部屋から女の金切り声が。
その時点で、洒落になってないと言ってA君とCさんは外に逃走。
固まるB君は「今までこんなこと起きたことない!」と言い、佐藤君はケロッとした表情で「俺がいるからだよ多分(笑)」と返しました。

時間は既に深夜2時過ぎ。さすがにこの時間から家にも帰れないA君とCさん、家に居たくないB君。4人はファミレスで朝を待ったそうです。


この話を聞いていて思いました。B君も聞かなかった、聞けなかったのかも知れませんが、もし前の所有者が死んでたら?それを聞いた時、佐藤君は両方の人差し指で×を作って見せました。


後日談になりますが、B君がお母さんに掛け軸の出所を聞いたものの、分からないとのこと。
祖父母はオカルト的なことを嫌いましたが、お母さんは思い当たる節もあったのでしょう、床の間に飾ってあったものは全て売った(正確にはお金は要らないから引き取ってくれと言った)そうです。

お父さんはその後回復して退院、お母さんも体調が戻ったようですね。

少し経ってから、お父さんに掛け軸の出所を聞いたところ、床の間に合いそうな壺を買ったら一緒にくれたもので、前の所有者も分からないとのことでした。

まあ、命があって良かったですね。


投稿者:TR
投稿者のTwitter:@tr_sato