昔、僕が高校生の頃、同級生の友達(M)が体験した話をする。

当時僕達はJRで隣町の高校に通学しており、学校帰りに時々5~6人の仲間と制服のまま、溜まり場の同級生(T)の家で夜8時頃まで遊んでから帰宅していた。

その日も(T)の家で遊んで、8時頃に解散して、各自自宅へ帰った。


(M)は、いつも通り自転車に乗って自宅へと向かった。国道沿いの歩道をひたすら走って行くと、途中かなりヘヴィーな急カーブがある。その日の(M)は、買ったばかりのCDの曲を口笛で奏でながら上機嫌で曲カーブを通過して、その先の長い橋を渡って無事帰宅した。

その夜(M)は、12時前に布団に入り直ぐに眠りに着いた。その数時間後に変な夢を見た。その夢には、上から下まで真っ黒な【革のつなぎ】を着たバイクのライダーが現れて(M)の目の前に立っていた。

しかし、よく見るとライダーの首から上が見えない。いや、見えないのではなく完全に無いのだ。

そして頭部の無いライダーは、(M)に向かってかなり厳しい口調でこう言った。

『おまえ昨日の夜、あの急カーブを通過した時、口笛を吹いていただろう!!』

『次からは絶対に口笛を吹くな!何も考えずに通れ!』

『分かったな!!』


頭部の無いライダーの声は、怒りの籠もった強い口調で、(M)の耳元でハッキリと聞こえた。

恐ろしさのあまり目を覚ました(M)は、全身に大量の汗をかいており、時計を見ると明け方の4時を指していた。その後、恐ろしくて眠る事は出来ず、布団から出る事も出来ないまま、汗だくのパジャマのまま、起床時間の6時30分まで怯えながら過ごした。

やがて朝日が部屋に差し込み始め、一階の台所からは、母が朝ご飯の支度をする音が聞こえて来た。(M)は、ようやく緊張感から解放されて、部屋のカーテンを全開にして一階の台所へと急いだ。

丁度同じタイミングで父が起床して来た。いつもと様子が違う息子を見て、すかさず母が声を掛けた。

慌ただしい朝の僅かな時間だったが、(M)は両親に夢の中の出来事を全て話した。

すると両親は驚いた顔をした。そして父が言った。

『落ち着いて聞きなさい。あの急カーブは、お前も知っている通り昔から交通事故が絶えない。この10年間だけでも、3人が命を落としている。』

『そんな中でも、特に悲惨な事故が15年前に起きたんだ。お前はまだ幼かったから知らないだろうが…。』

『その日は朝からどんよりとした曇り空でな。昼過ぎから小雨が降り出してきた丁度その頃だった。一台のバイクが凄いスピードで急カーブに突っ込んで来た。路面が僅かに濡れていた事とスピードの出し過ぎが重なって、バイクはバランスを保てず猛スピードのままガードレールに衝突した。』

『その瞬間を目撃した人が数人いたんだが、ライダーはガードレールにぶつかった瞬間、態勢が悪く首がガードレールに擦りつき、一瞬にしてヘルメットを被った頭部が千切れて吹っ飛んだんだ。』

『頭部は、かなり遠くまで転がり草村へ入り土手を転がり、数十メートル下の河原まで落ちていったそうだ。』

『頭部の千切れたライダーの体は、しばらくの間くねくねと動いていたそうだ。目撃した人達は、警察に現場の様子を詳しく説明したそうだが、さぞかし辛かった事だろう…。』

『お前の夢に出て来たライダーは、間違いなくその時亡くなった人だろう。いいか…今日からあの場所を通る時は、絶対に何も考えるな。ただ無心で通るんだ!さもないと次は無いだろう。』

数日後、(M)は僕達に全てを話してくれた。『お前達も、もしあそこを通る時は絶対に無心で通れよ!』と言ってた。

数ヶ月後、徐々に分かって来た事がある。(M)と同じ地区に住む中高生の中に、(M)と同じ体験をした生徒が数名いる事が分かった。

皆、怖くて他言せずに過ごしていた様だ。

首の無いライダーは、今も成仏出来ないまま、あの場所で自分の頭部を探しながらさまよっているはずだ。


投稿者:シャリシャリ