随分と昔の話。

俺が小学校三年の時に親子遠足で、学校から徒歩で一時間程の所にある大きなダムへ見学に行った。

昼食は、ダムのすぐ近くにある神社の敷地内で、各々がお母さん等と弁当を食べた。食べ終わったら子供達で探検ごっこをして遊んだ。
仲の良い6人で神社の裏手の方に歩いて行くと、そこには大きな石で作った石像のような物があった。なんだかよく分からなかった俺達は、この石像のまわりで鬼ごっこをしたり、石像に向かって石を投げたりして遊んだ。

遊び飽きて神社に戻ると担任の先生がお母さん達と談笑していた。

俺達は石像が何なのか知りたくて先生に聞くと『あれは、昔このダムの建設中に事故で亡くなった人達の慰霊碑なんだよ。』と教えられた。

それを聞いた俺はかなりビビった。他の子達も口には出さなかったけど、ビビったに違いない。何も知らずに慰霊碑に向かって何回も石を投げて遊んでいたのだから。

その事は、その場にいた仲間だけの秘密にして忘れる事にした。

やがて帰る時間になり、先生が記念写真を撮るから整列して下さいと言われたので、お母さん達は後ろに並び、子供達は前に並んで写真に収まった。

無事に学校に戻り、親子で下校した。

それから三日後。先生が朝の出席を取り終えると、『○○君のお母さんが昨日入院をしました。詳しい事はまだわかりませんが、○○君はお父さんと一緒に病院に居るので今日は欠席します。』と説明された。

俺達は特に気にする事も無く一日を過ごした。翌日○○君が元気に登校して来たので、お母さんの事を聞いてみると、医者の話では原因不明の高熱が出て、なかなか熱が下がらないとの事だった。

原因不明と聞いて、さすがに先生も俺達も心配になった。

二日後、○○君のお母さんの容態は回復して、お粥を食べられる様になったと聞いて安心した。明日には退院出来るようだ。

しかし、安心したのも束の間。翌朝には、○○ちゃんのお母さんが自宅の階段から転落して、右足首を骨折して入院したと先生から聞かされた。頭部は怪我しなかったのが不幸中の幸いだったとの事。

そしてその日の終わりの会で、先生が遠足の集合写真を配布してくれた。皆で写真を見て大はしゃぎしながら下校した。

翌朝教室に着くと、数人がヒソヒソ話をしていた。なんだろう?と思い聞いてみると、昨日の集合写真を見ながら○○ちゃんが言った。『これ、心霊が写ってる。』と。

信じられない俺は、指された場所を確認した。よく見ると、誰かのお母さんの右側の腰から下全体に掛けて、男性らしき人が写っていた。色は白黒だが、結構ハッキリと確認できた。

実はもう一カ所にも霊らしき物が写っていると教えられて確認すると、誰かのお母さんの右足首を、そこにあるはずのない手が掴んでいた。こちらは白黒ではなく、肌色の手首がハッキリと見えた。

○○ちゃんは俺に向かって、『腰から下に霊が写ってる人は、原因不明の高熱で入院した○○君のお母さんやよ。で、霊の手に足首を掴まれてるのは、階段から転落して足首を骨折して入院した○○ちゃんのお母さんなんやよ。』って真剣な顔で教えてくれた。

俺は、慰霊碑の霊が怒ったんだ!と思って不安になった。先生も写真の事を少し気にしていたので、俺はあの日慰霊碑に向かって石を投げて遊んだ事を先生に話した。先生は俺達に叱ることは無く、『良く話してくれたな。』と言った。

二日後の日曜日、先生に連れられて、あの日石を投げて遊んだ仲間6人で慰霊碑の場所へ行った。そこには学校の近くにあるお寺の和尚さんが来ていた。

和尚さんは慰霊碑に向かってお経を読み始めた。10分程でお経は終わり、その後和尚さんの教えに従って全員で手を合わせて『ごめんなさい。許して下さい。もう石を投げたり悪いことはしません。本当にごめんなさい。』と謝った。

この時の事は俺達6人と先生と和尚さんだけの秘密で、他のクラスメイトは知らない。

その後、クラスメイトもその家族にも特に何も起こらなかった。

あの一連の出来事は単なる偶然だったのだろうか?今でも謎のままだ。

もうすぐ50歳になる俺達は、今でも同窓会で合った時には、あの写真の話をしてしまう。もちろん、今では同窓生全員に知れ渡っているが。


投稿者:紫陽花